1 はじめに

 こんにちは、弁護士の伊藤です。

 前回(離婚と出ていくお金の話)、前々回(離婚と先立つお金の話)は、それぞれ離婚に絡むお金についてお話してきました。

 当職の第3回目の担当回となる今回は、少し趣向を変えて、離婚原因をテーマにお話をしたいと思います。

2 愛(結婚生活)の終わり

⑴ 愛(結婚生活)の終わらせ方

 結婚生活の終わらせ方は、結婚がもともと二人の問題である以上、夫婦間の話合いですること(これを「協議離婚」(民法763条)といいます。)が原則となります。

 しかし、夫婦だけの話合いでは結論を見出せない場合には、まず、裁判所で話合い(これを「調停離婚」(家事審判法18条)といいます。)を試み、ここでも話がまとまらないという場合には、裁判所に判断をしてもらうこと(これを「裁判離婚」(民法770条)といいます。)になります。

⑵ 愛(結婚生活)の終わるべき理由

 夫婦がお互い納得して双方が新たな人生のスタートを切るという場合には、他人がとやかく口出しをする筋合いではありません。そのため、離婚の理由は自由です。

 しかし、夫婦の一方が離婚に応じないのに、国の機関である裁判所が、その夫婦を離婚させる旨の判断を出すには、法律に規定されたいずれかの離婚の理由(これを「離婚原因」といいます。)が認められることが必要となります(民法770条1項各号)。

⑶ 愛(結婚生活)を終わらせたい理由

 ところで、離婚をしようと実際に考える人たちは、一体どのようなことをその理由として挙げているのでしょうか。統計[1]をみると以下のことがわかります。

 夫・妻ともに、離婚したい理由の第1位は「性格の不一致」。これに「異常性格」という回答を合わせると、夫の8割弱、妻の5割強が、相手の「性格」を離婚の理由として挙げています。

 それに、夫は、「異性関係」(17.9%)、「性的不調和」(13.3%)、妻は、「暴力」(29.4%)、「異性関係」(25.5%)がそれぞれ続きます。

⑷ そのとき裁判所は・・・

 では、前記⑶のような離婚の理由が裁判所に告げられた場合、裁判所は、いったいどのような判断をすることになるでしょうか。

 まず、「異性関係」を理由とするものは、配偶者には貞操義務に違反する「不貞」(民法770条1項1号)があるとして、離婚が認められる可能性があります。

 一方で、「性格」「性的不調和」「暴力」に関しては、これらを直接の離婚原因と規定する条文がないため(民法770条1項ないし4項)、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するか否かを、個別の事案に即して検討していくことになります。

 ここで民法770条1項5号該当性は、裁判所において、個別具体的な事案を踏まえて、これが「肉体的・精神的調和や経済状態などすべての事情を総合してみても、到底円満な夫婦生活の継続及び回復が期待できない」[2]といいうるか否かの検討を通じて、判断をされることになります。

⑸ 実務の視点

 まず、「異性関係」を理由とする場合には、不貞行為は、通常表だって行われることがないという性質上、その立証には工夫が必要になります。

 他方、「性格」「性的不調和」「暴力」を理由とする場合には、法律構成や立証の点で考慮が必要になります。

 これらの点については、別の機会に具体的な検討を加えたいと思います。

3 最後に

 法的手続を通じて、自らが希望する一定の結論を得るためには、法令の解釈や過去の判例・裁判例に関する知識、裁判所での事実の証明などの、困難なプロセスを経ることが必要となります。また、具体的な事案によっては、いかなる手続をいつ使うかといった高度な判断が、成否を分ける場合も決して珍しくありません。

 このような点にお悩みの方には、弁護士がお力になれるものと考えます。ご相談を希望される方は、お気軽に法律事務所の扉を叩いてください。

 今回のお話は以上となります。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

[1] 最高裁判所「司法統計 家事 平成22年度」第18表‐婚姻関係事件件数‐申立ての動機別。なお、理由を3個まで挙げる複数集計。
[2] 司法協会「親族法相続法講義案(六訂再訂版)」78頁

弁護士 伊藤蔵人