皆様こんにちは。あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
さて、本ブログは離婚ブログと銘打ってます。離婚する当事者は、当然のことながら婚姻関係にある夫と妻です。このブログを見てる人は結婚している人も多いと思いますが、離婚の前提としての結婚について、日本における婚姻成立の要件を他の国と比較しながらコラム的に紹介したいと思います。
日本における婚姻成立の要件は2つあります。1つは、当事者に婚姻する意思の合致があることです。この一つめの要件は当然のことといえますね。真に婚姻する意思の合致がないのに婚姻が成立するなんて不合理な話ですもんね。まさしく婚姻のための中核的な要件といえますね。
2つめの要件は、婚姻届を役所に提出することです(民法739条)。よくドラマで婚姻届が出てきたりしますね。
以上2つの要件が日本における婚姻成立のための要件です。そして、ここで他の国と比較したいのは2つめの届出の要件です。日本では単に届出を提出するだけで手続的な要件を満たします。
ところが、フランスでは、婚姻に先立ち、戸籍吏に身分証明書と健康診断書を提出することが求められます。そして、婚姻挙式が行われる旨の公告が市役所の入口で行われます。これは、2人の婚姻に異議のある者に申立ての機会を与えるためです。そして、挙式の際に、戸籍吏は、民法典の夫婦の権利義務に関する条文を読み聞かせ、互いに夫とし妻とする旨の申述を聞き、その上で婚姻が成立したことを宣言します(フランス民法63条乃至75条)。
このようにフランスでは、日本と異なり婚姻手続のための要件が非常に厳格となっています。このような厳格な手続を行うのは、当事者に婚姻意思があることをしっかり確認するためであります。
これと比べると日本の手続的な要件は届出のみで、当事者に婚姻意思があるかを確認するためには十分な手続とはいえないかもしれませんね。しかし、このような手続的な要件が非常に緩和されているため煩わしい手続から当事者が解放されているともいえます。当事者に婚姻意思の合致が欠如しており紛争が生じた場合には事後的に解決すれば足りるという考え方ともいえます。この点、日本の産業の多くの分野で、私人の経済活動を規制し紛争を未然に防ごうとしているのに対し、婚姻のような家族の法律関係については規制が非常に緩いことは対照的で面白いですね。
これから社会情勢は大きく変化するとは思いますが、みなさんは婚姻成立の手続的な要件としては、日本のような緩やかなものがいいと思うでしょうか、それともフランスのように当事者の婚姻意思をしっかり確認し事後的な紛争を未然に防ぐ方がいいと思いますか。婚姻も社会との関係での法律関係の一つですので一度、みなさん個人個人が考えてみるのもおもしろいと思います。
それでは、また。
参考文献(「民法親族・相続」(第2版)松川正毅)
弁護士 福永聡