こんにちは。
 今日も先週に引き続き、財産分与のお話をします。なぜか最近、財産分与関連の案件が多く、なんだか気になる存在なのです。

 皆さんは、保険に入っていますか?生命保険、損害保険、学資保険などいろいろあります。
 掛け捨てタイプ、貯蓄タイプなど、タイプも様々ですね。

 財産分与にあたって、これらの保険はどのように扱われるのでしょうか。

 貯蓄タイプは、預金のようなものなので、財産分与の対象となる財産です。

① 婚姻中に満期が来て支払われた生命保険金は、受取人名義が誰であっても、実質的に夫婦の共有財産として、財産分与の対象となります。

② 婚姻中に満期とならず保険料支払中の生命保険は、①と比べて不確定要素が多いのですが、別居時の解約返戻金を財産分与の対象とすることが多いようです。

 では、婚姻中に配偶者が交通事故にあって、損害保険から保険金を得た場合、それを財産分与の対象とすることができるでしょうか。交通事故の損害賠償金は、数百万円から数千万円になることもあり、無視することはできない財産です。

 この点について、損害保険金のうち、「逸失利益」に該当する部分のみ、財産分与の対象となる、とした裁判例があります(大阪高等裁判所決定平成17年6月9日)。

 交通事故の損害保険金には、逸失利益(事故により身体が不自由になったため、得られたはずの収入が得られなくなったことによる損害)、慰謝料(事故による傷害や後遺症から生じた精神的損害)などが含まれます。

 財産分与は、「夫婦が協力して得た財産は離婚時に平等に分けるべき」、という趣旨のものですが、慰謝料は夫婦が協力して得た財産とはいえません。他方、逸失利益は、配偶者が働いて得るはずだった収入のことです。そして、その配偶者が働くためには他方配偶者の家事育児の分担が必要なのですから、逸失利益は夫婦が協力して得た財産といえます。

 ただし、逸失利益に相当する額が、全額、財産分与の対象となるわけではなく、症状固定時(事故による怪我の症状が固定した時)から離婚時までの期間に得るはずだった収入額に相当する額が、財産分与の対象となります。

 保険金は、預貯金と異なって抽象的な感じがしますが、財産分与の側面ではあなどれません。