本講座⑫で23条照会の活用法を少し披露したところですが、続きです。すなわち、配偶者の不貞相手の勤務先が分かる方法があると言ったのですが、照会が終了したので発表します。
 ( 記事はこちら:お父さんのための親権獲得講座⑫

 要は、鉄道会社(もちろん、不貞相手の利用している電車が分からないといけません)に23条照会をかけて、申込書に不貞相手の勤務先を記入する欄があれば、それを開示してもらうという方法でした。

 しかし、結果は・・・不貞相手の勤務先の最寄り駅が分かっただけでした。
 というのも、どうも不貞相手は券売機で定期券を購入したらしいのです(笑)。また、そもそも定期券の申込み用紙をみると勤務先の記入欄がない鉄道会社もあります(私の知る限り、阪神電鉄はそうです。23条照会をかけた鉄道会社はまた別の私鉄でした)。そういうことで、とりあえず勤務先の最寄り駅はこの方法で分かります。勤務先までは分かりません。

 あと、失敗してしまった転送届の23条照会ですが、郵便事業株式会社が回答を拒否しているのを半ば骨抜きにする方法を偶然編み出したのでご紹介します。方法は簡単で、相手に簡易書留か何か(書留でも特定記録郵便でも、レターパックでもOK)を前住所宛てに出してみて下さい。出してしばらくすると、インターネットで「郵便追跡サービス」が使えるようになります。URLは下記の通り。
http://tracking.post.japanpost.jp/service/jsp/refi/DP311-00100.jsp

 それで、郵便局で教えてもらった「お問い合わせ番号」を入力すればいいのです。すると・・・相手の新住所の最寄りの郵便事業株式会社の支店が分かります。具体的な住所までは分かりませんが、大体この辺りに住んでいる、というのまでは分かります。

 「なんだ、そういうアバウトな情報でどうするんだよ!」とおっしゃるかもしれませんが、無いよりはましです。証拠入手のために探偵に依頼される人も少なくないかと思いますが、全くどの辺に勤務先や家があるのか分からないよりは、ある程度見当がついた方が探偵も調査しやすいはずです。場所が絞り込めれば、料金も多少は低くなると思います(調査時間が短くなり、また調査範囲が狭くなるため)。どうでしょうか?

 探偵で思い出しましたが、まれに使えない証拠しか取ってこられない探偵がいて、「せっかく高いお金を払ったのに、これではなあ・・・」と、依頼者・相談者のことを考えると悲しくなることがあります。今までで一番びっくりしたのは、女性の相談者が持って来られた(探偵曰く)「証拠」で、旦那さんが他の女性数人と酔っぱらって道を歩いている写真でした。それは世間一般では、「飲み会の記念写真」といいます(笑)

 そんな酷いのは論外として、よくある「ダメな証拠」としては、ものすごくピンボケで顔が分からないとか、配偶者や不貞相手の車を写したはいいが車のナンバーが読めないとか・・・飲み会の写真よりは良心的でしょうが、使えないという意味では同じです。探偵は写真技術を磨いた方がいい。

 証拠の内容について言及しますと、ラブホテルではない、民家への配偶者ないし不貞相手の夜間~早朝の出入りについては、1回(出たのと入ったの、セットで1回です)では不貞と認定されなかった判例があるようで、そこでできれば2回以上欲しいというふうに普段はアドバイスしております。こう言うと、「どうしても探偵が1回しか撮れなかった」、「1回半ではダメですか?」と質問されます。

 しかし、探偵が撮ってきた写真ばかりが証拠ではないので、例えば手紙やメール、電話の通信記録、他の人の証言等、色々な証拠を積み重ねて不貞の立証をすることは可能です。複数回の出入り写真がホームランとすると、出入り1回の写真はヒット、その他の証拠もヒットや送りバントになり得るので、いずれにせよ点が入ればいいわけです(例えとして野球が適切なのかどうか分かりませんが)。

 そういうわけで、とりあえず弁護士に相談される場合には手持ちの証拠を全部持って来てください。手持ち証拠で十分ならばそれでGOサインが出せますし、足りないようであれば、どういうものがあれば良いのかアドバイスいたします。

 以上、常にお問合わせの多い調査・証拠関連のお話でした。

 余談ですが、よくそのテの本やネットには「証拠のために日記をつけろ」と書いてありますよね。
 しかし、依頼者さん本人の日記は案外証拠価値が低くて、ですね。

 例えばDVなんかだと、ご自身が実際に体験しているのだから意味がありますが、不貞関係については別にご自身が「現場」を目の当たりにしているわけではありませんので(笑)、またちょっと意味合いが違ってくるのですね。せいぜい、「今日も○子の帰りが遅い」、「○子は夜な夜な電話をしている」といった程度のものでしょう。だからどうなの、と裁判官に思われかねません。

 また、日記も継続的に書かれていない、単なるメモですと証拠価値が極端に下がってしまいます。
 一番良いのは、不貞なんかに関係なく付け始めた日記に、たまたま不貞の話が出てくるというものです。「今日は帰りに本を2冊買った」、「日曜なので、みんなで遊園地に行った」とかいう日記の中に、急に「今日は、ボーナスが出たので一家で外食しようと思ったが、○子が家にいない。帰ってきたのは午前2時だった」、「子どもに、お母さんを知らないかと尋ねると、知らないおじさんの車に乗って出ていった、という」という具体的なのが交ざっているのがいいのです。

 でもまあ、そういう日記にはお目にかからないですね。特に男性。女性が夫との結婚生活に疲れて、他人に話せないのでグチを言うかわりに書いた日記のはずが、そのうち夫のDV記録になって、結果DVの証拠になったというのはときどきあります。そもそも男性ってあまり日記をつけないんですかね・・・。

弁護士 太田香清