お子さんの親権を獲得することを考えるのもだいじですが、実際に獲得した後のことを考えるのも重要ではないかと思います。

 そういうことで、親権晴れて(プラス監護権)を獲得して離婚した場合、どのようなことを心がけるべきかということについてお話ししようと思います。

1 元妻の悪口を言わない

 これは重要です。別れても、お子さんの実のお母さんであることに変わりはないわけですので、「お前の母ちゃんはひどい女だ」みたいなことを吹き込むのはやめましょう。「そんなひどい人の血を受け継いでいるの?」と、お子さんが自分の存在を否定するような気持ちになりかねません。そこまでいかなくても、面会交流のときにお子さんが複雑な気持ちになってしまうのは確実です。

 あと、お父さん自身がこの点に気を付けていたとしても、あなたのお父さんお母さん(お子さんからみるとおじいちゃんおばあちゃんですね)が元ヨメの悪口を吹き込んでいるケースが多く見られます。「ろくでもないヨメだった!」、「あんな大人になっちゃダメよ、○○ちゃん。」などと・・・これではお子さんがたまりません。ですので、あなたのお父さんお母さんにも、元妻の悪口をいうことについてのデメリットを十分に説明して、やめてもらってくださいね。ストレス発散は大人の中だけにしてくれ、と(笑)。

2 面会交流

 いろいろと理由をつけて面会交流を阻止するのはやめましょう。お子さんが行きたがっていない(というのも実はお父さんやおじいちゃんおばあちゃんが悪口を吹き込んだ成果である、という例が多々あるのですが)とか、体調不良だとか、学校行事があるとかで本当に面会交流ができないケースはやむを得ないと思うのですが、そうでない場合に難癖をつけて阻止するのはダメです。確実に後で元妻ともめます。

 私の実感なのですが、母親が親権をとった場合に、父親が面会交流できないのでもめるというケースは、その逆のケースより割合が少ないようです。わりとお父さんは諦めてしまうんですね。離婚調停のときこそ、やれ面会は月に2回はしないと嫌だとか、お泊りつきじゃないとムリだとか大騒ぎするんですが、実際に離婚が成立してしまうとお子さんに会えなくても諦めてしまうんですね。なぜなんでしょう、理由はよくわかりません。

 しかし、母親が面会交流できないというケースでは、女性は黙っちゃいません。自分がおなかを痛めて産んだ子なのに!という気持ちが強いのでしょうね。いろんな女性がいるので一概には言えませんが、まず電話やメールで抗議されます。当然ですね。気の強い女性なら、実際に家までやってきて抗議します。これも仕方がない。子どもに会えないのはツライ、というのでお子さんの通学路で待ち構える女性もいます。通学路ならまだしも、保育園や学校にまでやってくる女性もいます。ここまで来ると紛争も泥沼化してきます。お子さんとしても、参観でもないのに学校でお母さんに遭遇するなんて事態は避けたいところです(友達の目が気になります)。

 そういうことにならないためにも、お子さんをなるべく気持ちよく面会交流に送り出してあげるべきです。

 1と同じように、お父さんが面会交流に気持ち良く送り出す気持ちでいたとしても、おじいちゃんおばあちゃんが嫌がるというケースがありますね。「孫をとられてしまうのではないか?」と疑心暗鬼になっているかもしれませんが、そのような場合は警察に駆け込めば良いので(そうなると、面会交流をしなくてよい正当な理由ができます)、何とか彼らを説得してください。

3 再婚

 こればっかりはこうしろ、ああしろとはいえません。正解はないんじゃないかと思います。新しい奥さんに子どもが懐くケースもあればそうでないケースもあるでしょう。いうまでもありませんが、お子さんを犠牲にして自分の結婚を優先するのだけはやめましょう。

4 仕事

 典型的な仕事人間で、気が付いたらお子さんの養育をおじいちゃんおばあちゃんにまかせっきりにしていた・・・というのでは何のために親権をとったのかわかりません。もちろん、収入がないと生活できませんので一日中家にいろとは言いません。しかし、少し仕事を早く終わらせて子どもと過ごす時間を増やす程度の工夫はしましょうね。そうでないと、お子さんに「おばあちゃん、あのおじさん誰?」なんて言われかねませんよ!

5 心にゆとりをもつ

 今まで書いた1~4全てにかかわって来る話だと思いますが、お父さんがピリピリしているとお子さんにまでピリピリが伝染します。

 不況ですので、仕事のこと、お金のこと、住宅のこと、と不安要素がたくさんあるのはやむをえません。が、そんな不安をお子さんにぶつけてもどうしようもないですね。何の解決にもならないのは当然ですが、お子さんに悪影響がでます。そういうわけで、せめてお子さんのまえでは「男前」でいましょう!

弁護士 太田香清