こんにちは。
本日のお題は、不貞行為です。今まで私のブログで取り上げたことはあまりなかったのですが、最近、不貞行為の訴訟案件がけっこうあることに気付きました。
そこで本日は、不貞行為訴訟で原告と被告がどういうことを主張立証するかというテーマでお話しします。
不貞行為慰謝料請求訴訟では、原告が、被告の不貞行為を立証しなければなりません。
これに対して被告は、もちろん、不貞行為を否認するのですが、「仮に不貞行為をしていたとしても、不貞行為の前に夫婦関係はすでに破綻していた。」という主張もします。すでに夫婦関係が破綻しているなら、法をもって保護すべき夫婦の平和な生活というものもないので、不貞行為をしても、不法行為とはならないからです。
不貞行為慰謝料請求訴訟は、このような構造になっているので、たいてい、①不貞行為があったかどうか、②不貞行為前にすでに夫婦関係が破綻していたか、の二つが大きな争点になります。
①不貞行為があったかどうか、については、訴訟を始める段階で、原告は、そこそこ証拠を持っています(あまり証拠がないようなケースでは、訴訟という手段をお勧めしません)。そういう意味では、原告は訴訟を進めるにあたり、初めから一歩リードした立場にいます。
これに比べて被告は大変です。まず、濡れ衣であれば、当然、「不貞行為はないのではないか」と裁判官に思ってもらえるように証拠を出さなければなりません。しかし、「ない」ことを立証するのは、本当に大変です。
また、実際に不貞行為をしている被告は、「不貞行為があったとしても、その時点で夫婦関係は破綻していた。」と主張することになります(濡れ衣の人も、念のため、「仮に不貞行為があったとしても…」と同様に主張します。)。しかし、「破綻」を立証するのは、別居でもしていない限り、難しいです。つまり、通常、別居していれば、それをもって「破綻」と判断されることが多いのですが、同居していたけど家庭内別居でした、というだけでは、なかなか「破綻」を立証するのは困難です。
同居中の場合は、「破綻していた」といえるためには、口をきかないという程度では足りません。同居しているので、いつでも夫婦関係を修復できるとも判断されかねません。また、家庭内で口をきいていないかどうかは、立証も困難です。ですから、口もきかず、家計も別、一緒に食事をとることもなく、当然一緒に外出することもない・・・という状態が必要です。
しかし、多くの夫婦では、もう夫婦間に夫婦としての愛情はなく、単なる同居人と化した間柄でも、家計は一緒になっていたり、たまに一緒に外出したりしているものです。ですから、被告としては、別居でもしていない限り、「すでに破綻していた」と反論することは非常に困難になります。