こんにちは。長谷川です。

 事務スタッフと、月に1回、法律や法律事務に関しての勉強会をしています。
 先日、その勉強会で、離婚事件についての説明をしていたら、「破綻後の不貞」の話になりました。  「破綻後の不貞」とは、簡単に言ってしまうと、夫婦仲が壊れたあとに浮気しても慰謝料請求の対象にはなりませんという理屈です。以前もお話しましたが、不貞を理由に慰謝料が請求できるというのは、「不貞」が夫婦の破綻の原因(又は、少なくとも破綻に瀕する原因)になった場合なのです。

 では、どうなったら、破綻「後」といえるのでしょうか。
 夫婦関係は千差万別だから、定型的に「こうなったら破綻」とは決められませんが、一般的には、別居があれば、破綻と見ることが多いと思います。
 だから、別居後であれば、浮気をしても、慰謝料請求の対象にはならない可能性が高いということになります。

 こんな説明をしたら、スタッフから更にこんな質問を受けました。「じゃあ、別居の翌日に付き合いだした女性と、その日に肉体関係を持ったら慰謝料は払わなくて良いんですか?」
・・・。はい。理屈だけ突き詰めて言ったらそうなります。
 ただ、裁判って、客観的に判断されるものなので、別居した翌日に、突然、肉体関係を含む深い交際をする恋人ができる(しかも、恋人になったその日に肉体関係まで進んでいる)ってことは、通常、考えづらいですよね。
 そうすると裁判所からは、十中八九、「別居前から付き合っていたでしょ」=「破綻前からの不貞」として認定されてしまうので、慰謝料を払わざるを得ないと思います。(それに別居後1日しかたっていないと、そもそも別居という事実だけで破綻と認めてもらえるかどうかも怪しいですね。)

 こんな感じで説明したら、同じスタッフから、更に、「じゃあ、別居前は、『まだ別居前だから』ということで肉体関係はないままお茶を飲むだけのプラトニックなお付き合いだった。それで別居の翌日に『もう大丈夫だから』ということで肉体関係まで進んだらどうなのか?」と妙に具体的な質問がされました(笑)。
 ・・・。絶対、そんなことないでしょって思うんですが、仮に、そんな状況があったとしても、裁判所が「別居前からデートはしてた」と知ったら、まあ、普通は、別居前から肉体関係を含む交際があったと判断(邪推?))すると思います。  だから、破綻前茶飲みデート作戦も慰謝料請求回避には役立たないですね。

 この次にくる質問は、「じゃあ、別居後どのくらいの期間がたったら、肉体関係を含む交際をしても、『破綻後の不貞』と認めてもらえますか?」という感じでしょうか。
 ・・・。出会って、肉体関係を含む交際に至る迄の常識的な期間ってどれぐらいでしょうかね。
。。。デートの頻度にもよるし、当事者のキャラクターにもよるでしょうが、月に2回ぐらいデートするとして、1~2ヶ月ぐらいは経過してからですかね。。。
 早すぎる?遅すぎる?(笑)
 でもそうすると、別居と肉体関係の成立まで、最低2~3ヶ月は経ってないと、肉体関係を含む交際が破綻後(別居後)に始まったとは裁判所も認めてくれないと思います。(あくまで感覚的判断ですが、率直なところ、2~3ヶ月後でも、破綻後不貞の認定をしてくれるかどうかは、微妙な感じがします。保守的傾向が強く疑うことが基本である裁判所の立場を考えると、「破綻後不貞」の認定を確保するためには、最低でも、半年はほしいなあ、というのが個人的な希望です。)

 こうなると、「『破綻後の不貞』ということで慰謝料請求を回避するにはどうしたら良いでしょうか。」っていう質問がくるんですかね。
 ・・・。そんな方法があったら、私も是非知りたいです。あ、変な意味じゃないですよ。法律相談で、男性のご相談者からの(?!)ニーズがありそうですもの。
 方法論としては、別居前(つまりは同居中)から、夫婦仲が非常に悪くって同居とは言いながら実態は壊れていたということを細かく主張・立証していくということになるんでしょうね。そうは言っても、「同居」という形がある限りは、別居前から実質的に破綻していたという主張はなかなか厳しいんだろうとは思いますが。
 何か、効果的な方法があったら、どなたか是非、教えてください(笑)。

弁護士 長谷川桃