こんにちは。
 本日は、前回に引き続き、財産分与のお話しをします。

 最近は不況で、離婚時に夫婦双方ともほとんど財産を持っていないケースが多々あります。財産がほとんどないどころか、借金しかない、というケースも多いです。

 通常であれば、離婚時には財産分与がなされ、一方の配偶者が他方の配偶者に対して金銭を支払ったり、物を渡したりします。しかし、借金しかないような場合、お金も物も渡せません。そこで、そもそも、マイナスの財産しかないような場合に、財産分与というものができるのか、疑問が出てきます。

 一般的には、財産分与の趣旨は、婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産は、離婚する時に清算して二人で半分ずつに分けるべき、というものです。そして、通常は、プラスの財産ばかりでなく、マイナスの財産(借金)があることが多いので、プラスの財産とマイナスの財産を合算して、プラスになれば、それを二人で半分ずつに分けることとなります。

 マイナスの財産しかない場合や、財産をすべて合算したらマイナスになったというようなケースでは、たしかに、二人で築き上げた「財産」というのが観念できないですよね。だから、財産分与の趣旨がストレートにはあてはまりません。

 判例の中には、債務(マイナスの財産)のみを対象として、まず、分与額を決めたものもあります(東京地裁平成11年9月3日)。しかしこのケースは、プラスの財産もあり、ただ、マイナスの財産のみについて先に負担割合を決めましょう、と言った判例でした。つまり、分与対象となるプラス財産があるけれど、計算の方法として、先にマイナス財産だけ分与の仕方を決めましょうという方法をとったものです。

 ですから、このような判例があるからと言って、マイナスの財産しかないような場合に、必ず財産分与請求ができるとは限りません。

 また、マイナスの財産の分与については、事実上、難しい問題があります。

 財産分与は、あくまで、夫婦二人の間で合意されるものですが、二人の間で債務の分与を合意して、債権者に対し、「これからこの債務は、半分は妻が負担することになったから。」などと言って、いきなり債務者の変更が可能となってしまっては、債権者はたまったものじゃありません。

 債権者としては、お金を貸した当初は、夫の収入を信用してお金を貸したのに、離婚をきっかけに妻が半分の債務を負担することになれば、妻が全く収入の無い人だとしたら、債務の支払いが危ぶまれます。ということで、仮に二人の間で債務の分担を決めたとしても、債権者が簡単には認めてくれません。ですから、話合いで債務の分担をすることにするのであれば、事前に、債権者の了解を取っておく必要があります。