以前、内縁についての話をしました。もっとも、日が経っていますので、改めて、内縁の定義を示します。

 内縁とは、婚姻の意思をもって、共同生活を営み、社会通念上夫婦と認められる実態があるにもかかわらず、婚姻の届出をしていないため、法律上は夫婦と認められない男女の関係をいいます。

 内縁は婚姻に準ずるものとして、届出の効果とされるもの以外、婚姻と同等の法的保護がなされます。婚姻費用分担請求(民法760条)や財産分与請求(同法768条)等の規定は、内縁にも適用があるのです。

 ただ、事実上の関係であるため、解消のし易さという点では、法律上の手続を踏まなければ解消できない婚姻より、解消が容易です。もっとも、法的保護の全くない単なる「同棲」と比べると、正当な理由なく解消すると不当解消として損害賠償請求の対象となる点で、解消しにくいとは言えるでしょう。同棲は、勝手気ままに一方的解消をしても、誰も文句を言えないわけです。

 しかし、内縁と同棲の境界、区別はそれ程明確ではないかもしれません。両者を画する決められた基準が存在するわけではないのです。もっとも、内縁の定義から考えればわかることですが、法律上の婚姻夫婦を思い浮かべて、そういった人たちがどのような生活をしているか、これと共通項が多くある程、内縁と認められやすい、そう思っておけば間違いありません。

 例えば、家計が一緒か否か。普通、夫婦が給料を互いに干渉せず、別々に使うなどないでしょうから。

 また、互いの親族に挨拶が済んでいるか。通常、結婚すれば、双方の両親と会っていないなんてことは考えられないでしょう。

 そして、勤務先や近所の人たちは、二人をどうみているか。上司から「おまえいつまで独身やってんだ」と言われるようなら、未だ同棲レベルで、「おまえの奥さんいくつだっけ?」と言われるようなら、内縁といった具合です。

 あと、なんといっても大きいのは、同居期間の長さと子供を見据えた性交渉をしているか否かですね。単なるカップルが一緒に住んでみようかという場合だと、長くは続かないことが多く、同居が1年、2年となるにつれ、夫婦同然の内縁となっていくでしょう。

 また、短期的付き合いの恋人同士なら、女性を妊娠させるわけにはいかないと避妊具を付けてしかセックスをしないのではないでしょうか。これに対し、夫婦同然の関係なら、いつできても構わないから、避妊せずにセックスをするってなことがいえるかもしれません。

 そういった種々の事柄から、内縁か同棲かを判断していくことになります。