山本です。こんにちは。今回は、調停前置主義に触れてみます。

 家事審判法18条1項は、「人事に関する訴訟事件」を提起する場合には、まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければならないと定めています。離婚訴訟も「人事に関する訴訟事件」の一種であるため、離婚訴訟を提起したいのであればまず離婚調停を申し立てなければならないことになります。調停を経ずにいきなり訴訟を提起しても、同条2項本文により裁判所の手で調停に付されることとなります。

 さっさと離婚をしたいと考えておられる方には迂遠に映るかもしれません。ただ、人事訴訟、家事事件は、ビジネス的な金銭問題などと異なり、人情や肉親の愛憎などが強く反映される分野です。そのため、裁判官のような第三者が、判決の形でバッサリ処断することに馴染まないと考えられているのでしょう。まず、なるべく話し合いによる解決の可能性を探り、もはや話し合いでの解決の見込みがないと認められてから裁判所の判断に任せる形式となっているのだと思われます。

 調停を経ても当事者間に合意の成立が見込まれなければ、調停は不成立となります。ここに至ってようやく、離婚訴訟を提起することができるようになります。ただ、調停が不成立になったからと言って、当然に訴訟へと移行するものではありません。訴訟を提起するのは当事者の意思ですから、当事者による訴え提起がなければならないのは普通の訴訟と同じです。なお、調停不成立の通知を受けてから2週間以内に訴えを提起すれば、家事審判法26条2項より調停の申立て時に訴えの提起があったとみなされます。

 最後に、調停の前置はどのような場合でも必要なのでしょうか。
 例えば、離婚の相手方がどこかへ行ったきり行方不明になってしまった場合などは、話し合いも何もあったものではありません。このような場合にまで調停を要するのでは、当事者に無用の負担をかけることになりかねません。そこで、家事審判法18条2項但書は、「裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるとき」は、調停を経ずに訴訟を提起することを認める旨定めています。相手方が行方不明の場合などは、この規定が適用される可能性があると考えられます。