すでに、何度かこのブログでもご紹介していると思いますが、不貞行為などをした配偶者からの離婚請求を有責配偶者からの離婚請求といいます。

 そして、判例は、

① 夫婦の別居期間が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいるか否か
② その間に未成熟の子が存在するか否か
③ 相手方配偶者が離婚により精神的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような事情が存するか

等の諸点を総合的に考慮して、当該請求が信義誠実の原則に反するといえないときには、当該請求を容認することができるとしています(最高裁昭和62年9月2日大法廷判決)。

 「未成熟の子」となっていますが、これは、一般的には、親の監護なしには存在しえない子をいいます。では、「未成熟の子」とは、未成年に限られるのでしょうか?たとえば、成人していても重い障害をもっているような場合、「未成熟の子」に当たらないのでしょうか?

 四肢麻痺という重い障害をもった成人の子がいる場合に有責配偶者の離婚請求が認められるかについて判断した裁判例があります(東京高裁平成19年2月27日判決)。

 この裁判例は、日常生活全般にわたり介護を必要とする状況にある場合、成人に達していても未成熟の子にあたるとしました。そして、有責配偶者からの離婚請求を棄却しました。

 この裁判例のように、成人していても介護が必要な場合には、「未成熟の子」に該当する可能性があるようです。ただし、この裁判例は、介護が必要な成人の子がいるという事情のほかに、子の介護をする配偶者が、子の介護をしており、さらに高齢(54歳)であるために安定した職業に就業できないこと、有責配偶者が借りた部屋に居住しており、離婚を認めた場合、退去を迫られる可能性があることなどの事情もありましたので、一概に介護が必要な成人の子がいるだけで、有責配偶者の離婚請求を認めなかったとは言えないかもしれません。

弁護士 竹若暢彦