今回は協議離婚の手続の概要等について説明します。

 協議離婚は、市町村役場、区役所に備え付けられている専用の離婚届用紙に、夫婦双方と、成人している2人の証人が署名・捺印して、夫婦の本籍地または夫婦のどちらかの所在地(住所や居所など)の市町村役場、区役所に届け出ることによって成立します。

 夫婦も証人も、署名は自署しなければなりません。ただし、印鑑は実印である必要はありません。認印で大丈夫です。証人は成人している人であれば、誰でもかまいません。字を書けない人は、代書してもらって大丈夫です。ただし、この場合には代書をさせた旨を記載してください。判例上、代書をさせた旨の記載を忘れたとしても、届出は有効とされていますが、法律、規則上は記載しなければなりませんので、忘れなければ記載しましょう。

 届出をすることができる人は夫婦のどちらかのみであり、代理人による届け出はできません。ただ、使者を差し向けて届け出るのは有効です。役所ではその人が代理人なのか、使者なのか、判断ができないでしょうから、関係ないかもしれませんが、法律上はそうなります。

 結婚によって名字が変わった人は、離婚の際、名字は原則として結婚前の名字に戻ります。戻したくない場合には、離婚の届出をした日から3カ月以内にその旨を届け出なければなりません。お役所的には離婚届と同時にこの届出をしてもらうと、戸籍の記載が簡略にすむため、有り難いようです。また、離婚によって名字が変更しうる人は、従前の戸籍から抜けることになりますので、本籍地をどうするかなどの届出も必要になります。ですから、離婚によって名字が変更しうる人が市町村役場へ持っていくのが便利でしょう。

 提出する離婚届は1通作成すれば十分であり、2通以上作成する必要はありません。ただし、本籍地以外の市町村役場に提出するときは、戸籍謄本が必要になります。届出は、普通、市町村役場に持っていくことが多いですが、郵送でもかまいません。ただし、戸籍に記載される離婚日は、届出の日ですので、郵送のときは市町村役場に届いた日が離婚日になります。

 最後に、離婚をする時、未成年者の子がいるときは、必ず親権者を決めて、離婚届出用紙に記載しなければなりません。記載していないと受理されませんので注意してください。

 なお、離婚に関しては、離婚の届出をするときに、法律上の婚姻関係を解消する意思がある必要があります。離婚届を作った時、お互いに離婚をする意思が固まっていたとしても、時間がたってから届出をすると、相手から、やっぱり気が変わって離婚するつもりがなくなっていたから無効だ、といった主張をされて、紛争の種となりかねませんので、離婚届を作ったら、速やかに届出をすることをお勧めします。

弁護士 松木隆佳