こんにちは。
 今日は、離婚した元夫が死亡した後に、元夫の相続人に対して、財産分与を請求することができるか、という問題についてお話します。

 離婚に際して財産分与についても取り決めることが多いのですが、離婚が先に終わり、離婚後に財産分与ということもありえます。財産分与は、離婚から2年以内であれば、請求することが可能ですから、必ずしも、離婚と共に財産分与しなければならないというわけではないからです。

 したがって、離婚してから2年のうちに、元夫が死亡してしまう、という事態も当然生じ得ることになります。

 そのような場合に、元妻が、財産分与請求権をみすみす逃してしまうことになってしまうとすれば、先に死んだ元夫のみが得をするように見えます。

そこで、元妻が、元夫の相続人に対して、財産分与を請求することができないか、が問題となります。

この点について判断した以下の事案があります。

【事案】
 元夫の不倫により、ある夫婦が離婚しました。
 離婚から約1年8カ月後に、元夫が死亡しました。
 元妻は、離婚から約2年後に、元夫の相続人(元夫との間の子)に対し、財産分与の審判を申立てました。

【大分地裁昭和62年7月14日判決の要旨】
 いわゆる清算的財産分与義務に関しては、それが財産的請求権であることに鑑みると、その相続を否定する理由はない。

 一方、扶養的財産分与義務については、相続財産中に存在するその潜在的持分の取り戻しを認めるとともにその生活保障を図るという相続制度の趣旨は、離婚の場合の財産分与にもあたること、相続人が元夫の立場に立って財産分与に関する協議をすることも可能であること、等を理由として、扶養的財産分与義務の相続を肯定しました。

 このように、財産分与義務は相続人に相続されるので、元妻は、元夫の相続人(元夫との間の子)に対し、財産分与を請求できるということになりました。

 それにしても、元夫との間の子つまり自分の子に対して財産分与を請求するなんて、元妻は、元夫に対してよほどの恨みがあったのでしょうか・・・。