X´がY会社に対し、会社解散請求の訴え及び社員総会決議取消または同決議無効確認の訴えを提起した。ところが、その第1審係属中X´は死亡し、遺産分割協議の結果、XがX´の出資持分全部を相続により取得した。そして、Xは、X´の地位を承継したものとして本訴を遂行した。第1審は、社員の会社解散請求権及び社員総会の取消・無効確認請求権は共益権であり、社員の一身専属権であることを理由に、相続人において訴訟承継をすることができず、訴訟は当然終了すると宣告した。原審もXの控訴を棄却したので、Xが上告した。

「有限会社における社員の持分は、株式会社における株式と同様、社員が社員たる資格において会社に対して有する法律上の地位(いわゆる社員権)を意味し、社員は、かかる社員たる地位に基づいて、会社に対し利益配当請求権(有限会社法四四条)、残余財産分配請求権(同法七三条)などのいわゆる自益権と本件におけるような会社解散請求権(同法七一条ノ二)、社員総会決議取消請求権(同法四一条、商法二四七条)、同無効確認請求権(有限会社法四一条、商法二五二条)などのいわゆる共益権とを有するのであるが、会社の営利法人たる性質にかんがみれば、これらの権利は、自益権たると共益権たるとを問わず、いずれも直接間接社員自身の経済的利益のために与えられ、その利益のために行使しうべきものと解さなければならない。このことは、社員が直接会社から財産的利益を受けることを内容とする自益権については疑いがないが、社員が会社の経営に関与し、不当な経営を防止しまたはこれにつき救済を求めることを内容とする共益権についても、異なるところはない。けだし、共益権も、帰するところ、自益権の価値の実現を保障するために認められたものにほかならないのであつて、その権利の性質上権利行使の結果が直接会社および社員の利益に影響を及ぼすためその行使につき一定の制約が存することは看過しがたいにしても、本来それが社員自身の利益のために与えられたものであることは否定することができないからである。そして、このような共益権の性質に照らせば、それは自益権と密接不可分の関係において全体として社員の法律上の地位としての持分に包含され、したがつて、持分の移転が認められる以上(有限会社法一九条)、共益権もまたこれによつて移転するものと解するのが相当であり、共益権をもつて社員の一身専属的な権利であるとし、譲渡または相続の対象となりえないと解するいわれはないのである。

 以上説示したところによれば、本件における会社解散請求権、社員総会決議取消請求権、同無効確認請求権のごときも、持分の譲渡または相続により譲受人または相続人に移転するものと認められる。その理は、本件におけるように、社員が社員たる資格に基づいて会社解散の訴、社員総会決議の取消または無効確認の訴を提起したのち持分の譲渡または相続が行なわれた場合においても、異なるところはない。

 ところで、社員が右のような訴を提起したのちその持分を譲渡した場合には、譲受人は会社解散請求権、社員総会決議取消請求権および同無効確認請求権のごときは取得するけれども、譲渡人の訴訟上における原告たる地位までも承継するものとはいえない。これに反して、相続の場合においては、相続人は被相続人の法律上の地位を包括的に承継するのであるから、持分の取得により社員たる地位にともなう前記のごとき諸権利はもとより、被相続人の提起した訴訟の原告たる地位をも承継し、その訴訟手続を受け継ぐこととなるのである。もし、原告たる被相続人の死亡により同人の提起した訴訟が当然に終了するものとするならば、本件の社員総会決議取消の訴におけるように提訴期間の定め(有限会社法四一条、商法二四八条一項)がある場合において、被相続人の死亡当時すでにその提訴期間を経過しているときは、相続人は新たに訴を提起することができず、原告たる被相続人の死亡なる偶然の事情により、社員がすでに着手していた社員総会決議のかしの是正の途が閉ざされるという不合理な結果となるのを免れないのである。

 してみれば、本件訴訟については、原告たるAの死亡により、同人の有した被上告会社の持分の全部を相続により取得した上告人において原告たる地位をも当然に承継したものというべきであり、右Aの死亡により本件訴訟が終了したものとすることはできない。」

 として、最高裁は、上告を認容し、原判決を破棄、第1審判決を取り消して、第1審へ差し戻しました。

 この判決のポイントは、会社は営利法人なので、共益権も経済的利益のために認められ、自益権保証のために認められたものに他ならないとしたことです。
 会社の営利性を重視しているといえるでしょう。

 また、本判決は、包括承継について述べた判決であり、特定承継の場合にまで、その射程が及ぶかは微妙なところといえるでしょう。そのため、特定承継については判例の集積を待たなければならないでしょう。

弁護士 大河内由紀