離婚原因に多くみられるのが、配偶者の不貞行為です。この場合、もう一方の配偶者は、離婚に際して不貞行為を行った配偶者に慰謝料を請求できます。もちろん、不貞相手にも慰謝料を請求することができます。

 では、離婚に際して慰謝料が支払われる場合に税金が課されることがあるのでしょうか?

 所得税法9条1項17号は以下のように定めています。

「次に掲げる所得については、所得税を課さない。
十七  損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの」

 つまり、慰謝料については所得税を課さないといっているのです。慰謝料は、そもそも不法行為により失ったものを填補してもらう性質を有していますから、当然ですが、所得には当たらないということで所得税を課さないのだと思います。

 これまで、養育費や財産分与により財産を取得した場合の課税について記事を書きましたが、いずれについても課税される可能性がありました。ところが、慰謝料については課税される可能性はないようです。おそらくですが、慰謝料は、養育費や財産分与と異なり、精神的損害を填補するという性質を持つものだからだと思います。つまり、養育費や財産分与は必要以上にもらえばプラスを生じますが、慰謝料は、マイナス分をゼロに戻すもので、プラスを生じることは観念できないからだと思います。

 もっとも、紹介してきたように養育費も財産分与により財産を取得した場合も課税されるのは、かなり例外的な場面に限られますので、実際には、養育費、財産分与、慰謝料いずれの名目でもらっても、もらう財産が相当な額であれば、あまり大きな違いはないように思われます。

弁護士 竹若暢彦