養育費を算定する場合、実務では通常、従来家裁の実務で行われていた算定方法を迅速に行えるようにした算定表が使用されています。

 この算定表はインターネット上で誰でも入手することができますし、本屋で売っている離婚法律相談の本の巻末付録等にもなっていますので、相談者の中には、あらかじめ調べてから相談にお越しになる方も多くいらっしゃいます。

 今回は、以前ご相談者から聞かれたことのある、算定表についての素朴な疑問のいくつかについて書いてみようと思います。

1.表の「年収」とは手取りか額面か

 算定表を使用するためにまず必要となるのは、権利者と義務者の総収入を認定することです。サラリーマンの場合、いわゆる「手取り」と「額面」のどちらの金額かというと、「額面」の方で、認定の資料となるのは源泉徴収票の「支払金額」欄に記載された金額です。ちなみに、自営業者の場合は確定申告書の「課税される所得金額」を収入としてみます。

 ただし、「課税される所得金額」には、税法上引かれてしまっているけれど実際には支出されていない費用(例:基礎控除、扶養控除等)がありますので、それを課税される金額に加算したものが総収入ということになります。このことについては、算定表の使い方をよく読めば書いてあるのですが、あまり読まない方も多いため、迷われるようです。

2.義務者の年収が算定表の年収の上限を超えている場合はどうすべきか

 算定表では、義務者の年収の最高額について、給与所得者の場合は2000万円、自営業者の場合は1409万円までしか記載されていません。では、義務者がそれ以上の収入のあるリッチな人だった場合には、どのように養育費を算定したらよいのでしょうか。

 これについては、収入が上がれば養育費もそれに応じて上がるという考え方と、算定表の上限のゾーンの金額で頭打ちにする(根拠としては、収入がある程度を超えれば、その分は貯蓄に回し、生活費が上がるわけではないから、ということです)という考え方があります。

 個人的には、義務者の収入が高いと、子供が私立の学校に通っていたり、家賃の高い家(この場合往々にして光熱費も高い)に住んでいたり、生活費も収入に応じて高くなっており、転校や引っ越し等により生活レベルをすぐに下げることはなかなか現実的に難しい場合が多いのだから、前者の考え方を支持したいような気がします。もっとも、審判における裁判所の考え方はケースバイケースのようです。

 算定表を使用される場合には、使い方をよく読み、それでもご不明なことについては弁護士にご相談されるのがよいかと思います。

弁護士 堀真知子