2. そもそも面会交流とは?
面会交流とは、離婚した夫婦のうち、子と一緒に生活していない親が子と直接会うなどの交流をすることをいいます。
わが国では、かつて、戦後しばらくまでの間、子と同居している親との関係を重視して、面会交流には慎重でした。しかし、その後、社会経済情勢の変化が進むにつれ、子ども自身が離れて暮らす親と会いたいという気持ちを持っていることが少なくないこと、親が子の成長の状況を知りたいと思うことも自然な心情であるという考えから、社会全体が面会交流について肯定的な考え方が生じてきました。
現在の家庭裁判所では、面会交流によって子の福祉(子の利益)を害するおそれがない限り、面会交流を認め、実現する方向での運用がなされています。
3. 面会交流が子どもの成長にもたらす影響
面会交流の実施による子の利益としてよく挙げられているのは、両親の離婚という子どもにとって重大な影響が生じる出来事のショックが、面会交流によって軽減される可能性があるという点です。
子どもは、両親の離婚によって、どちらの親につくか悩む、大好きなお父さん(お母さん)と一緒に暮らせなくなるなどといったことから、不安や悲しみなどを感じ、感情的に非常に混乱することが通常です。その結果、子どもには精神的に強いストレスがかかります。このストレスが、子どもの成長に悪影響を及ぼすであろうことは想像に難くありません。
このような、子どもに対する悪影響を少しでも軽減するために、離れて暮らす親も、子どもの養育に関与すべきであると考えられています。その根拠となる、面会交流に関する子どもへの良い影響として、以下の点が指摘されています。
離れて暮らす親と子どもが定期的に交流し、父母双方と良好な関係を維持した場合、子どもの自己肯定感が両親の揃った親と大差なく、子どもが精神的に健全に生育するといわれています。
また、離れて暮らす親との面会交流により、子どもが両親から愛されているという経験を持つことで、自尊心や他者を尊重する気持ちを持つようになるともいわれています。
ほかにも、一緒に暮らす親の意見や感情に巻き込まれず、両親から等距離を置くことで親離れが可能となるといわれています。
4. 面会交流は子どものための制度
面会交流とは、子どもが親との離別というつらい出来事から立ち直り、その悪影響を軽減するための制度といえます。あくまで子どもの福祉のため、子どもの利益のための制度です。そして、上でみたように、良い面会交流をすることで、子どもに良い影響が出ることが認められています。
離婚した父母は、お互いに悪い感情を持っていることが多いですから、相手に子どもを会わせたくないという気持ちを持つことも仕方ないかもしれません。しかし、子どもにとっては、片方の親と離れて暮らしていても、親であることには変わりません。面会交流を実現することは、通常は、子どもの成長に良い影響を与えるものです。
両親が離婚したとしても、子どもに両親からの愛情を受けているということが伝わっていれば、きっと子どもに良い影響があるはずです。面会交流の実現をためらっているお母さん(お父さん)も、子ども福祉のための制度であるということをご理解いただき、子どものために、ぜひ面会交流を実現してほしいと思います。