この点、判例上、離婚届に署名捺印した後でも届出当事において既に離婚の意思を翻したときは離婚の効力はないとされています(大判昭和16年11月29日)。また、合意により離婚届を作成した一方の当事者が、届出を相手方に委託した後、離婚を翻意し、右翻意を市役所戸籍係員に表示しており、相手方によって届出がなされた当時、離婚の意思を有しないことが明確であるときは、相手方に対する翻意の表示または届出委託の解除の事実がなくとも、協議離婚届出の効力はないとされています(最判昭和34年8月7日民集 13巻10号1251頁)。

 これらの判例からは離婚届の用紙に記入する時だけでなく離婚届出をする時においても離婚意思を有している必要があり、そうでない場合には離婚は無効となります。したがって、離婚届の用紙に記入をした時には離婚しようと思っていたが、その後離婚する気がなくなったにもかかわらず離婚届出がなされた場合、離婚は無効となります。

4 まとめ

 以上から、離婚には届出時まで離婚意思が必要となるため、離婚用紙の届出があったからと言って必ず離婚が有効とはなりません。
 もっとも、離婚意思は当事者の内心であるため、離婚の意思を翻したと認められるには離婚届記入から離婚届時まで長期間経過しているなど具体的な事情が必要となります。現在は、離婚届出の不受理申立制度があるため、まずは離婚届を記入したが離婚を翻意した時は役所でこの申立てをすることが確実です。

 しかし、不本意にも離婚届が受理された場合、離婚を無効とするには当事者だけの話し合いでは解決できないため、このような場合まずは弁護士にご相談ください。