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ご相談者の場合、日々刻々と未払養育費は請求できなくなる可能性が高まっています。
急いで弁護士に依頼し、養育費について公正証書や調停による取決め(債務名義)があった場合には、強制執行の手続を行いましょう
離婚協議書といった債務名義ではない合意にとどまる場合には、地方裁判所で判決を取得し、強制執行の手続を行う必要があります。
他方で、公正証書や調停による債務名義がない場合や合意が存在しない場合には、すみやかに家庭裁判所に調停を申し立てましょう。

因果関係

  養育費の未払いについては、消滅時効を観念できる場合と、できない場合があります。
 まず、相談者が元夫との離婚の際に養育費の金額と支払時期を合意した場合には、相談者が元夫に対し養育費を請求する権利は定期給付債権とされ、消滅時効の期間は5年と考えられております(民法169条 東京地裁平成23年4月14日判決)。よって、元夫が5年を経過した部分に関しては、消滅時効を援用する場合があります。

 そして、このように養育費についてあらかじめ一定の金額を定期的に支払うことを内容とする合意が存在するにもかかわらず、元夫が養育費を任意に支払ってくれない場合、相談者としては、公正証書や調停・審判等による債務名義がある場合には執行手続により給与その他の財産を差し押さえることによって未払養育費を確保していくことになります。公正証書や調停等による債務名義がない場合には、民事訴訟を提起し判決を得てから、執行手続に進む必要があります。

 これに対し、相談者が元夫との離婚の際に養育費の金額や支払時期が定まっていない場合には、この相談者が元夫に養育費を支払ってもらう権利は定期給付債権としては扱われないため、5年の消滅時効は適用されません。そして、この場合の未払養育費について、養育費の金額だけでなく、どのくらいの期間さかのぼるのかも含めて、家庭裁判所が個別的事情をもとに決定します。

 結局、支払の額や支払時期について定まっていない未払養育費については、消滅時効の問題ではなく、このさかのぼる期間の問題に集約されることになります。具体的に、いつまでの期間さかのぼるかの起算点としては、別居時や調停申し立て時、離婚時等とする例があります。ただし、養育費の都度発生し都度消滅する性質から、養育費をさかのぼって請求する場合には、個別的な事情に照らし養育費をさかのぼることが相当であることを、きちんと裁判所に主張していく必要があります。
 今回の相談者の場合では、相手方の具体的な収入を把握した上で、10年分の養育費を元夫に支払わせることが必要かつ相当であり、元夫にとっても過酷ではないこと等を積極的に主張する必要があります。いずれにせよ、少なくとも請求時からの養育費を確保するために、早急に調停を申し立てる必要があります。