養育費確保のための強制執行の特長

 離婚のときに取り決めた養育費が支払われなくなった場合、どうすればよいのでしょうか。
 養育費の取り決めが調停、審判でなされた場合、又は公正証書が作成された場合、養育費を支払わなければならない元夫又は元妻の財産に対し、強制執行を行い、養育費の支払いを確保することができます。
 養育費確保のための強制執行については、以下の特長があります。

1 期限到来前の差押えが可能

 強制執行は、原則として支払期限が到来しているにもかかわらず未だに支払われていない債権について行うことができます。例えば、判決で確定した毎月の家賃が支払われなくなった場合、支払期限が過ぎている未払賃料についてのみ強制執行できるため、毎月支払われない度に強制執行するか、ある程度未払分が蓄積してからまとめて強制執行するかになります。
 支払期限前でも強制執行できるとなると、支払期限を定める意味がなく、債権者に必要以上に有利になってしまうためです。

 しかし、養育費は、子を養育監護する者にとって日常の生計を維持するために不可欠なものであるため、期限が到来するまで待ってから強制執行を認めたのでは経済的に困窮するおそれがあります。
 また、月払いの場合、毎月支払われないのを確認した後、繰り返し強制執行を行わなければならないのでは負担が大きくなります。
 そこで、養育費については、一部が支払われなかった場合、まだ期限が到来していない分についてもまとめて強制執行を開始することができるとされています。
 なお、強制執行を行うためには、養育費の支払いの一部に不履行がある必要があり、全く不履行がない場合や、不履行があったが、既に全て支払われている場合には、義務者の利益を害するため、当然強制執行を行うことはできません。