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ケースバイケースなのですが、慰謝料請求が認められる可能性は十分にあります
まず前提として、ご質問に不倫とありますが、基本的に、慰謝料請求が認められるのは、不貞行為です。そのため、以下では、元夫が不貞していたことを前提として、解説していきます。

因果関係

 なぜ不貞により損害賠償が認められるのでしょうか。判例(最判平成8年3月26日)は、不貞が「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為」であるからとしています。
 一般的に、婚姻期間中に不貞の事実を知らなかったとしても、不貞があれば婚姻共同生活の平和が害されますので、慰謝料請求できると思われます。

 ただし、婚姻関係が既に破綻していた場合、害される婚姻共同生活の平和がないため慰謝料請求が認められません。
 今回の場合、仮に不貞より前に性格の不一致で婚姻関係が破綻していれば、慰謝料請求は認められません。
 実際、東京地裁の裁判例(平成24年5月8日)では、不貞により婚姻共同生活平和維持の権利が大きく害されたとはいえないなどとして慰謝料請求を否定したものもあります。

時効

 他にも注意が必要です。その一つが時効です。慰謝料請求は、不法行為を知ったときから3年又は不法行為時から20年で時効により消滅します(民法724条)。
 そのため、不貞を知ってから3年が経っている場合や、20年以上前に離婚している場合は、時効によって慰謝料請求が認められない可能性があります。
 本件は、昨年離婚しているので、時効は問題になりません。

 

協議離婚書との関係

 協議離婚の場合、離婚協議書を作成することがあります。この中では、離婚に関する争いを終了させるために、「当事者間には何らの債権債務が存しない」などのいわゆる清算条項を入れることがあります。
 そこで、清算条項と慰謝料請求との関係が問題となります。
 これについては、不貞という重要な前提事実を知らなかったわけなので、錯誤により協議離婚書の合意が無効となる可能性があります。そのため、清算条項によって、慰謝料請求ができなくなるとは限りません。
 ご質問では、明らかではありませんが、離婚協議書を作成していた場合、その作成経緯をみて、上記のような錯誤があるのかどうかの検討が必要となります。

おわりに

 以上のように、離婚後に不貞の事実を知った場合でも慰謝料請求が認められる可能性は十分にあると思います。ただし、時効や離婚協議書との関係で慰謝料請求ができない場合もあり得ます。また、紙面の都合上、記載できませんでしたが、その他の問題もあります。
 慰謝料請求できるか迷われましたら、ご相談ください。