- A.
- どちらかがペットを引き取ることになるでしょう。
ペットへの面会交流は、法的には権利として認めがたいものです。しかし当事務所では、離婚時の交渉をお受けし、ペットを子のように慈しむ夫婦の互いの気持ちを確認しあった結果、ペットの面会交流を公正証書の内容として実現した例があります。
ペットは、夫婦にとっては子のように慈しむべき対象ですが、法的には「物」として扱われ、財産として離婚時の財産分与の対象になります。しかし当然、1匹のペットを2つに分けることはできませんので、夫婦のどちらかを飼い主として定めることとなります。その際には、飼育環境(ペット可住居かどうか等)、飼育能力(現実的に世話ができるか等)、ペットの時価等が考慮要素になるでしょう。単に引き取り手を定めるだけでなく、片方がペットの時価額を支払って引き取るというような解決も考えられます。
面会交流というのは、民法766条1項に定めがおかれていますが、人間の子どもから親に面会するための権利とされています。ペットが法的に「物」として扱われる関係上、物には権利が認められていませんから、ペットとの面会交流も法的には実現が難しいといえます。
しかし、このような解決は法的に正しくても、愛情をかけてペットを育ててきた当事者には不満を残すことが予想されます。当職も猫を飼っていますが、彼女を引き渡さなければならないとしたら、その精神的苦痛は甚大となるでしょう。
当事務所では、このような当事者の気持ちに配慮し丁寧な交渉を行った結果、当事者双方納得の上で、夫婦のうちペットを引き取らなかった方とペットとの面会交流を定めた公正証書を作成した経験があります。この件では、夫婦双方がペットを子のように強く思っていたことから、疾病や死亡のときの緊急連絡合意や毎月の飼育料についても詳しい定めをおくことになりました。
先ほど紹介した件では、別れた夫婦のどちらにもペットを引き取る環境が整っていましたが、残念ながらどちらも引き取れなくて揉めるというケースも想定されます。その場合には、第三者に引き取ってもらえるようにしなければならないでしょう。
なお、質問のように婚姻中に飼いはじめたのではなく、婚姻前から夫婦の一方が飼育していたペットの場合は、「婚姻中に夫婦が築いた財産」に該当せず、財産分与の対象にならないと考えられます。そのため、特別に合意して定めない限り、もともと飼っていた方に所有権が帰属する(飼い主になる)かたちになるでしょう。