2 差押禁止債権の範囲の縮減

強制執行は、債務者の財産(不動産、動産、債権)に対して行うことになりますが、給料債権を差し押さえようとする場合、通常、給料のうち4分の3にあたる部分については差し押さえることが禁止されています。
給料は多くの者にとって生活の糧となるものであり、その全部又は大部分が差し押えられるとその者及びその家族の生活が立ち行かなくなってしまうためである。
これに対し、養育費は子を養育監護する者にとって日常の生計を維持するために不可欠なものです。また、差押禁止債権は上記のとおり債務者及びその家族のために確保されたもの、つまり、債務者の生活費の他に債務者が扶養すべき子の養育費も含めて確保しているものです。
したがって、養育費のための強制執行においては、債務者のために給料の4分の3も確保する必要がないため、差押えが禁止される範囲が給料の2分の1にあたる部分に縮減されています。

強制執行をすぐに行える形で養育費を確定しておくことが重要

 以上のとおり、養育費のための強制執行は、通常の強制執行に比べて、債権者にとって有利になっています。
 もっとも、強制執行を行うためには、調停、審判の中で養育費が決定している、又は、養育費の支払いについて公正証書が作成されている必要があります。

 もちろん離婚の際に養育費支払いの口約束をすることでも有効ではありますが、実際にその約束通りに支払ってくれなくなった場合、養育費の支払いを求めて調停、審判を申し立て、養育費の支払いについて確定してからでなければ強制執行を行うことができません。
 ですので、将来養育費が支払われなくなる心配がある場合、調停、審判によって養育費の内容を確定させておく又は公正証書を作成しておくことをおすすめします。