2 離婚に伴う不動産移転と税金

(1)不動産を渡す側の税金

 財産分与として不動産を移転させた場合、分与者には譲渡所得税が課せられます。これは、不動産の移転によって、分与者が負っていた分与すべき義務が消滅するという経済的利益を分与者が受けたと考えるからです。また、慰謝料として不動産が移転された場合も同様です。

(2)不動産をもらう側の税金

 財産分与・慰謝料として不動産を移転させた場合、取得者には不動産取得税が課せられます。なお、場合によっては、不動産取得税が減免される可能性があります。

(3)課税と財産分与の錯誤

 過去には、財産分与の際に課税を考慮していなかったことから、財産分与自体が白紙になった事例もあります。

最高裁平成元年9月14日判例

 離婚の際に銀行員であった夫が妻に対して、自宅不動産を財産分与したが、後々になって夫に2億円以上もの譲渡所得税がかかることが発覚し財産分与の錯誤無効を主張した事案です。
 最高裁は、夫が不動産移転によって妻に課税されることを心配していたことに注目し、夫が財産分与において課税の点を重視していたのみならず、夫自身には課税されないことを当然の前提としていたと考えられるとして、課税について錯誤がなければ夫は財産分与の意思表示をしなかっただろうと判断し、財産分与の錯誤無効を認めています。

 このように課税の検討を忘れて財産分与自体が白紙になるということはまれかもしれませんが、課税を考慮せずに財産分与を行い、追々想定外の税金を負担しなければならないというケースはある程度の頻度で起こっているのではないかと思います。
 また、すべての弁護士が税金に精通しているというわけではありませんので、離婚事件において大きな財産を動かそうとするときは、合意を取り交わす前の段階で、弁護士に対して税金はどうなるのかを確認することをおすすめします。