財産分与とは

 離婚に伴い、夫婦の婚姻中に形成した財産の清算や離婚後の扶養などを処理する手続きが財産分与です(民法768条1項)。

 財産分与の目的は、婚姻中の夫婦の実質的共有財産の清算と離婚後の扶養で、場合によっては慰謝料の趣旨も含むものとされています(最判昭46・7・23)。

給付者(支払う側)が負担する税金

1 金銭で支払われる場合

 この場合、給付者に対し、課税はありません。

2 金銭以外の資産による場合

 金銭以外の資産によって財産分与、慰謝料が支払われる場合、譲渡所得の租税要件、「資産の譲渡」(所得税法33条1項)に該当し、譲渡所得が生じます。
 この場合、土地や建物などの分与財産の分与時の時価が譲渡所得の収入金額とする所得計算がなされます(所得税基本通達33-1の4)。

 もっとも、支払う側がマイホーム(居住用財産)を分与する場合、譲渡所得の計算において「3000万円の特別控除」が適用されます(租税特別措置法35条)。所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3000万円まで控除できるというものです。ただし、譲渡所得の特別控除は、「親族以外のものへの譲渡」の場合ですから、離婚成立後に譲渡する必要があります。

 また、婚姻期間が20年以上の夫婦について土地建物の分与が行われる場合、離婚前に贈与し、給付を受けた者がこれを居住に使用することにより、最高2000万円まで配偶者控除の特例の適用を受けることができます(相続税法21条の6)。

給付を受けた者(支払われる側)が負担する税金

1 原則

 財産分与を受けた方に対して、原則として贈与税はかかりません。

2 例外

 例外として、次の①②当てはまる場合、贈与税がかかります(相続税法基本通達9-8)。

① 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た産の額やその他すべての事情を考慮してもなお過当である場合、その過当な部分について贈与税がかかります。
② 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合、財産のすべてに贈与税がかかります。

3 財産分与のうち、慰謝料として受け取った部分についても税金はかかりません。

 慰謝料は、心身に加えられた損害に起因して支払いを受ける損害賠償金と考えられており、非課税となっています(所得税法9条の1項17号)。

最後に

 離婚に伴う財産の処理には、さまざまな複雑な制度がかかわってきます。わからないことだらけで不安の方、お困りの方は、ぜひご相談くださいませ。

弁護士 江森 瑠美