1 私立学校の学費をどのように工面するか

 子供を私立に進学させたいけれど、学費をどうしよう? 教育費は、夫婦関係が健全であれ、危機に瀕している場合であれ、世帯収入が極めて潤沢な場合を除いて、多くの家庭が直面する問題だと思われます。

 夫婦関係に問題がない場合は、専業主婦(又は主夫)が働きに出て世帯収入を増やすとか、教育ローンを組むとか、早い段階から進学を見越して学資保険を組むとか、はたまた双方の祖父母から援助を受けるとかして対応を検討するのでしょう。
 しかしながら、夫婦関係が破綻あるいは危機に瀕している場合には、子供を監護養育する側の収入が十分でない場合、その原資の大きな部分は他方の(元)配偶者から支払われる婚姻費用あるいは養育費ということになると思われます。

2 標準婚姻費用で私立学校費がまかなえるか

 このブログをご覧になっている方の多くは、離婚を検討するか、離婚されて教育費の問題に直面しておられる方なのではないでしょうか。そして、インターネットが発達した今日、そのような方々の多くが、いわゆる標準婚姻費用・養育費の算定表をご覧になっているものと思われます。

 文部科学省の統計調査、「子どもの学習費調査(平成26年)」によると、私立中学校の年間学習費総額は、133万8623円にのぼります。月あたり、11万円を超える負担が、子供一人あたり監護親にのしかかってくる計算です。
 他方、国税庁の民間給与実態統計調査(平成26年)によると、国民の平均給与は、正規の場合が男性で532万円、女性の場合が359万円、非正規の場合が男性で222万円、女性で148万円となっています。

 ここで仮に、別居中の夫が正規従業者で532万円、妻が非正規で148万円の年間給与を受け、12歳の児童を妻が監護しているケースを想定してみます。
 この場合、前記算定表によると、夫から妻に支払われるべき月額婚姻費用は約8万円ということになります(養育費の場合は約4万5000円)。

 そうすると、妻側世帯は、婚姻費用と妻自身の収入をあわせて20万円程度(養育費の場合は17万円程度)の収入ということになります(税等を控除したいわゆる手取りはもっと少なくなるでしょう)から、ここから月額11万円の教育費用を支出することは極めて困難ということになるでしょう。このような場合に、婚姻費用や養育費を標準額以上に受け取ることはできないのでしょうか?