3 標準婚姻費用・養育費で考慮されている教育費

 標準婚姻費用(及び養育費)は、平成10年から同14年の家計等調査に基づいて計算されているところですが、これによると、国公立中学校に子供を通わせている世帯の平均年収は、828万4332円であり、さらに標準婚姻費用等の算定にあたり計算されている教育費は、年額13万4217円です。
 したがって、仮に子供を私立中学に進学させるにあたり実際に上記金額と同等の費用が必要とするならば、考慮されていない約120万円の費用が生じていることになります。

 私立中学へ子供を進学させることが従前からの夫婦の合意により進められてきた方針であるならば、婚姻関係が危機に瀕したからと言って、その全額を監護親だけの負担として押し付けることは妥当とは言えないでしょう。

4 私立学校教育費を特別費用として請求していく方法

 そうすると、国公立中学校ではなく私立中学に子供を進学させる場合にかかる余分な費用を、非監護親にも分担させることが公正に適うというべきです(もちろん、上記と事情が異なり、非監護親の知らないところで、監護親が勝手に子供を私立中学に進学させることに決めたなどの事情がある場合には、これとは異なる考慮がなされる可能性があります。)。
 この場合に、その分担額をどのように定めるかには様々な問題があります。

 例えば、経費として見込むものを授業料に限定するかどうか、各種費用や制服代等いわゆる学校教育費全般まで認めるか、あるいは学校外活動費まで含めるかどうかがまず問題となるでしょう。さらに、特別費用として見積もられるべき金額が決まったとしても、その負担額をどのように監護親と非監護親に割り付けるかも問題となります。両者の収入の割合に応じて按分する方法もあり得ますし、標準婚姻費用の分担がなされていることを前提に各々に半分ずつ負担させるという方法もあります。義務者の負担額があまりにも過大となる場合には、さらに別途考慮がなされる場合もあります。

 上記の例を前提に考えると、特別教育費を120万円とした場合、収入で按分する方法だと、非監護親である夫が負担すべき月額婚姻費用は約16万円となるものと思われます。他方、半々の負担とする場合は同じく約13万円となるでしょう。

 いずれにしても、婚姻費用や養育費における特別費用の考え方や解決方法はそれぞれの個別事情に応じて様々ですので、婚姻費用や養育費について、教育費の分担にお困りの方は、ぜひ専門家に相談されるべきです。
 ALG&Associatesでは、このような事案も多数取り扱ってきておりますので、お悩みの方は是非ご相談ください。