わが国の制度上、婚姻している男女が婚姻を解消すなわち離婚するためには、両者が任意に合意する(協議離婚といわれるものです。)場合を除き、まず、調停を行わねばならないとされています(調停前置主義、家事事件手続法257条1項)。

 調停は、家庭裁判所において、調停委員を介して当事者間で合意ができないかどうかを探求する手続です。

 ところが、相手方が行方不明で連絡を取ることができないような場合、この調停手続に相手方を呼び出すことができません。この場合、調停を行うことはできません。

 では、このような場合には離婚することができないのでしょうか。

 相手方が行方不明になった原因が事故や災害などである場合、当該危難が去った後1年が経過すれば、失踪宣告を申し立てることで、相手方の死亡が法律上認められることとなります(民法30条2項、同31条)。これにより、婚姻関係解消の効果を得ることができます(あくまで「離婚」という効果を得たい場合には裁判が必要です。)。

 相手方が、単に所在不明というにとどまらず、「生死不明」の状態になり、3年以上これが継続している場合にも、裁判で離婚を求めることが可能です(民法770条1項3号)。

 さらに、相手方が突然家出し、2年以上行方不明になっているような場合にも、「悪意の遺棄」として裁判離婚を求めることができる可能性があります(民法770条1項2号)。

 このような場合には、相手方を調停で呼び出すことは当然できませんので、例外的に調停を経ないで離婚訴訟を提起することが可能となる場合があるとされています。

 但し、裁判を提起するためには相手方に対して訴状を「送達」しなければなりません。訴状の送達は、通常は相手方の住所地や勤務先に特別送達という形式の郵便で送ることで実施されるのですが、相手方が行方不明の場合には、特別送達を行うことは原則として不可能です。
 このような場合に利用されるのが、「公示送達」の手続です(民事訴訟法110条、111条)。

 これは、訴えがあったことを裁判所の掲示板に掲示し、2週間の経過を以て相手方からも何らの応答もない場合に、送達があったものとみなす手続です。

 離婚などの人の身分関係にかかわる人事訴訟において公示送達の手続を利用することは例外的扱いであり、申立の際には相手方の親族等にも調査を行った上でその者の行方が知れないことを明らかにする必要があります。

 公示送達により訴訟を裁判所に提起することさえできれば、申し立てた原告本人の尋問等を経て、離婚原因があると判断されれば、判決により離婚することが可能となります。

 これらの手続は簡単ではなく、事前の準備も必要なことから、配偶者が行方不明となって離婚を考えておられる方は、弁護士法人ALG&Associatesまでご相談ください。