前回は、離婚がどれほど多いか、というお話をしました。ただ、お子さんがいるために離婚に踏み切れない、子どものために離婚を避けるのが普通なのではないか、といった不安に対し、再び厚生労働省のデータに基づいてご説明いたします。
平成20年の1年間の離婚件数は、25万1136組でした。この中で、子どもがいながらにして離婚した件数は、14万3834組でした。しかもこれは未成年者の親権を行わなければならない子どもがいる事案ですから、20歳以上の子どもがいる事案は含まれていません。約55%は子どもがいる離婚です。この数字だけからでも多く感じられないでしょうか。私が今までに相談を受けた離婚事件というのは、お子さんがいらっしゃる事件がほとんどでした。 ですから、お子さんがいらっしゃるからといって離婚に踏み切るのは良くないということは一切ありません。
さて、子どもがいる離婚のうち、3月に離婚をしているのが1万5706組でした。1年間で最も多い月で1割を占めています。離婚をするというのは、当事者間の話し合いで決まるものですから、学年が変わる直前の3月に切りを付けている、というわけでもないでしょうが、そのように考える方も多いのかもしれません。ただ、1年で12か月しかない中でも1割ですから、ずば抜けて多いというわけでもありません。もしかすると、3月は裁判官が移動する時期ですので、仕事を残したくないとして頑張るために多いのかもしれませんね。ただ、裁判上の離婚の割合がそれほど多くないことから、どれくらい影響しているかは疑問です。
お子さんの年齢によって、離婚を考えたりすることがあるかもしれません。そう思いまして、お子さんの年齢別の離婚件数を調べようと思いましたが、厚生労働省の発表した平成21年度の離婚に関する統計には、分析がありませんでした。おそらく戸籍の届出などに基づいて算出しているため、わからないのでしょう。ただ、離婚時の夫婦の年齢別の表はありました。それをみると、離婚した夫婦の年齢で一番多かったのは30代で約9万組ありました。そのうち、子どもがいた離婚は約5万7000組もありました。2番目に多かったのは40代ですが、3番目に20代が多く、約4万組ありました。20代のうち子どもがいた離婚は約3万組もいました。若年層の離婚で子どもがいる離婚が多いということは、年齢が低い子どもがいる離婚も多いのではないかと思います。実際、法律相談でも多くあります。
以上のように、子どもがいることで、あえて離婚を避ける必要はありません。むりに我慢して精神的にご自身がおかしくなってしまう方が心配です。ただ、一つだけ頭の隅に置いておいていただきたいのは、離婚に関し、子どもは悪くなく、夫婦の問題に巻き込まれてしまうということです。ですから、離婚の際にはお子さんの気持ちを考え、自らのエゴにとらわれずに、親権者、養育費、面接交渉など、きちんと決めてあげないといけないということを忘れないでください。
弁護士 松木隆佳