不貞慰謝料を請求する場合、「不貞があった」ことは、請求する側が立証していかなければなりません。

 しかし、「不貞」とは原則として婚姻外性交渉のことを言います。性交渉は、私の認識するところでは、外で堂々と見せつけるように行うものではありません。当事者同士だけになって屋内で行われることが圧倒的に多いはずです。その場面を、不貞慰謝料を請求する側、すなわち不貞をされたほうの配偶者は見ていないでしょう。 

 たとえば、Aと結婚しているBが、Cと手をつないでラブホテルに入っていく姿を撮影した写真があったとしましょう。さらに、3時間後に2人で出てきたこともわかっているとしましょう。

 怒ったAがBとCに追及したところ、二人とも、「ただの友達同士だよ。ラブホテルには入ったけど、ちょっと内装が凝ってるとか聞いて興味がわいたから。別にセックスとかしてないし。そんな風に疑うなんて、配偶者への信頼とか愛とかが足りないんじゃないの。」と答えたとしましょう。

 さて、この場合、不貞の立証はどうなるのでしょう。

 確かに、ラブホテルの中まで追いかけて行って、その中の様子を撮影できたというような場合は非常に稀です。でも、そうでもしなければ立証できたとはいえないのでしょうか。

 ラブホテルというのはどういう場所かということをまず考えていただければいいと思います。通常はそこで、男女2人による性交渉が行われるでしょう。そのような場所に、男女が2人、親しげな様子で入っていたとなれば、合理的に考えて、性交渉が行われたのではないでしょうか。いくつかの事実から、合理的に考えて一つの道筋が導かれるのであれば、それはもう第一次的な立証は終えていると言っていいと思います。

 そして、そこから外れた道筋を主張するのであれば、その道筋を主張する側が言わなければならないことです。それは、最初に設定された道筋以外にその道筋もあり得るかもな、と通常一般人に思わせる程度のものである必要があります。要するに、普通に考えて、そんなことあり得るかどうかということです。

 ラブホテルに2人で入ったけど性交渉はない、同棲していたけれども性交渉はない、そんなことがあるでしょうか。

 たとえば、そのラブホテルが「見学OK」を掲げていたらどうでしょう。たとえば、BとCがそれぞれ男性と女性ではあるけれども、少なくとも一方は異性に興味のない方だったらどうでしょう。あるいは、俳優で、ドラマのロケ中だったらどうでしょう。そんな場合であれば、上記の事案でも、性交渉をしていないという道筋もあるのかもしれません。

 「不貞」と一口に言っても、今の手持ちの資料で立証できているのかどうか、十分に反論できるのかどうかというところは、必ずしも一律に明らかであるとは限りません。
 ぜひ、私たちにご相談ください。