今回は、扶養義務についてお話します。たとえば、離婚の際、成人していない子供がいれば一方の元配偶者が養育費を支払うということがありますが、これも扶養義務に基づくものです。

 それでは、扶養義務の順位とは民法においてどのように規定されているのでしょうか。

 民法では、扶養をすべき者の順序について、「当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所がこれを定める」(878条)とされています。また、扶養の程度又は方法については、「当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所がこれを定める」(879条)とされています。

 この「その他一切の事情」には、扶養権利者の職業や社会的地位、相続関係、過去の扶養の有無、権利者が扶養を要するようになった原因や責任などが考慮されるとされています。

 このように民法では、扶養義務者の順位や扶養の程度について細かく定めているわけではありません。しかし、審判例等においてこれらの扶養関係について一定の考え方があるようです。

 生活保持義務や生活扶助義務という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

 生活保持義務とは、扶養義務者が扶養権利者に自己と同程度の生活をさせる必要があるという扶養義務をいい、とくに夫婦間および親の未成熟子に対する扶養義務について発生するものです。他方、生活扶助義務は、生活保持義務関係以外にある親族間の扶養義務関係に妥当し、その程度は扶養権利者が生活に困窮したとき、扶養義務者が自己の地位相応な生活を犠牲にすることなく生活必要費を与えるという扶養義務であるといわれています。

 この考え方によれば、親子の関係は、生活保持義務関係にあるといえます。

 親子における生活保持義務との関係で、例えば未成年の子供がいる状態で離婚した場合には、一方が親権者、他方は親権を有しない親ということになりますが、親権を有する親の方に第1順位で扶養義務があるのではないかとも考えられます。この点は、反対説もありますが、通説・審判例では、親権を有する親と有しない親の間には扶養義務の順位に差がない、という考えをとっているようです(大阪高決昭和37年1月31日 家月14巻5号150頁)。