前回、離縁について触れましたが、今回は、離縁の具体的手続、調停・裁判離縁に関し、話して行こうと思います。

 まず、協議離縁の届出は、当事者双方及び成年に達した証人2人が署名捺印した書面か、これらの者からの口頭ですることが求められています(民法812条・739条2項)。ですから、夫婦が離婚する際、婚姻時、養子にした連れ子を離縁するということで意思が合致している場合、このような手続を離婚届の提出と共に行ってしまえばよいわけです。

 次に、養親と養子又はその代諾権者(養子が15歳未満であるとき、離縁後法定代理人となるべき者)との間で、離縁することに争いがある場合、いきなり離縁の訴えを提起することはできず、調停を申し立てなければなりません(家事審判法17条本文、18条、調停前置主義)。

 この申立は、養親及び養子の戸籍謄本、養子が15歳未満なら代諾権者の戸籍謄本を添えて、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に行うことになります(家事審判規則129条1項)。

 そして、離縁の調停が成立すれば、原則として調停申立人が調停調書の謄本を添えて、調停成立から10日以内に、申立人の住所地又は養親もしくは養子の本籍地の役場に届け出なければならないとされています(戸籍法25条1項、家事審判法21条1項本文、戸籍法73条1項・63条1項)。申立人が届出をしないときは、相手方が上記届出をすることになります(戸籍法63条2項)。

 他方、離縁の調停が不調に終われば、離縁の訴えを提起することとなるでしょう。この場合は、養親、養子、何れの住所地を管轄する家庭裁判所に対しても行うことができます(人事訴訟法4条1項、民事訴訟法4条2項)。

 上記離縁の訴えを提起するにあたっては、離縁原因がなければなりません。その離縁原因とは、民法814条に規定されています。すなわち、相手方から悪意で遺棄されたとき(同条1項1号)、一方が3年以上生死不明なとき(2号)、その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき(3号)です。離婚原因の規定(民法770条1項各号)とよく似た文言です。

 このため、離婚の際にしたお話しが、離縁の場合にも妥当するということがあります。例えば、婚姻関係が破綻していれば、包括的条項の「婚姻を継続し難い重大な事由」を認めていたのと同様、縁組当事者の関係がもはや社会通念上親子にみられる密接な関係を喪失していると認められれば、縁組関係が破綻しているものとして、「縁組を継続し難い重大な事由がある」とします(破綻主義)。

 また、有責配偶者からの離婚請求に対して、最高裁判例は、厳格な要件を設定しつつもこれを肯定していましたが、有責当事者からの離縁請求に対しても、同じような論理で、これを認めた高裁裁判例があります。

 すなわち、離縁の訴えを提起した者の有責性が問題となった事案において、「親子関係が正常な状態を欠くに至った期間が相当の長期間に及ぶ場合には、養親の離縁請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められない限り、離縁の請求を認容することができると解される。」と判示しているのです(東京高判平成5年8月25日)。

 仮に、不貞を働いた有責配偶者が、離婚請求と離縁請求を同時に行った場合、配偶者ないし縁組当事者との別居期間が短ければ、何れの請求も棄却されるでしょう。別居期間が相当長期となっていれば、不貞行為の態様が極めて悪質等社会正義の観点から、とても請求認容などできないといった事情がなければ、原則として何れの請求も認められるはずです。ただし、離婚請求については、当該夫婦間に未成熟の子が存在しないということが条件となりますが(最判昭和62年9月2日)。

 なお、誤解のないようにしたいですが、一般に離婚請求と離縁請求の双方がなされた場合、その結果が分かれることがあるのは言うまでもありません。

 例えば、離婚・離縁双方請求において、相手方配偶者が行方不明で3年間生死不明なら、離婚は認められるでしょうが、養子とした相手方の連れ子が未だ幼いような場合、離縁は認められないという結論になりうるでしょう。離縁を認めると養子が経済的に過酷な状況に置かれかねないからです。