こんにちは。長谷川です。
 今日は、久々に、外国人との離婚手続きについて、つらつらと書いてみようと思います。

 外国人と日本人のカップルが婚姻する場合、通常は、日本における届出(戸籍への記載)と、外国法に基づく婚姻の登録の双方をしていることが多いです。

 そうすると、離婚するときにも、離婚の届け出は、日本の戸籍へ届け出るほか、外国法に基づいた離婚登録をする必要が出てきます(これ、純理論的には、離婚の成立にかかる問題というよりも、実生活上、双方で届け出ていないと不便だからという問題なのですが、その点を詰め出すとややこしいので、割愛しますね)。

 さて、日本法では無事に協議離婚が成立し、簡単に戸籍窓口へ届出ができたので安心していたところ、いざ、外国法に基づいた離婚登録をしようとしたところ、思わぬ壁にぶつかることがあります。すなわち、諸外国の中には、日本のような協議離婚を認めていない国が結構あります。つまり離婚するには裁判所における離婚手続き(場合によっては判決)を必要とするわけです。

 そうすると、日本では協議離婚届を提出して簡単に離婚が成立したとしても、外国法での離婚登録の為に、わざわざ外国へ行って離婚裁判をしなければならないということになってしまうのです。

 そんな煩雑なこと、正直、やっていられませんよね。

 そこで解決方法です。

 通常、このような場合、日本でも協議離婚をせずに、調停離婚をすることとします。

 どういうことかといいますと、調停で離婚が成立した形にして調停調書を作成します。そしてその調停調書を外国語に翻訳して、裁判所において離婚手続きを行った証拠として添付し、離婚登録をするということです。

 そもそも協議離婚できるぐらい話合いが詰まっていたわけですから、形式を調停離婚にしても、恐らく調停は1回で終了してしまうでしょう。これだったら、調停を申し立てて1回は出廷しなければならないとしても、外国で裁判を行うよりも、遙かに費用/時間の点で速やか、かつ低コストな解決になります。

 注意すべき点としては、調停調書に「この調停調書は確定判決と同様の効力を有する」という一文を入れて貰うことです。すなわち、調停が成立すると作成される調停調書には「確定判決と同様の効力」がありますので(家事審判法21条1項)、この点を、調停で合意した内容と共に、調書に明記して貰います。このことは通常は、当たり前のことなので、明記することはありません。

 しかし敢えて記載して貰うと、「裁判所で離婚条件を決定し、それが確定判決と同様の効力のある裁判所の書類に記載されている」という形になりますので、これを翻訳し、離婚成立の証明書として添付すれば、「裁判所で離婚手続きを行った」として無事に外国法に基づく登録もできることになります。

 「ちょっと待って。離婚裁判と離婚調停は全く別のものなのに、そんなことできるの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。でも、こういう方式での離婚登録、何度かやっていますので、基本的には大丈夫だと思います。(家庭裁判所も、事情を率直に話すと、こういった記載をすること自体には協力してくれます。)

 ただ、準拠法が外国法の場合に解釈/適用や、それをどのように日本の裁判所で満たせるのかといった点は、安易に判断すると思わぬ落とし穴がありますので、くれぐれも、ご自身で判断せずに、弁護士等の専門家に相談して下さいね。

弁護士 長谷川桃