今回は、離婚に際し、親権者の指定が問題になることと関連して、養子縁組がなされていた場合、離縁も併せて行われる場合があるため、「離縁」のお話しをしてみようと思います。

 離縁には、協議離縁(民法811条1項)、審判離縁(民法811条3項)、裁判離縁(民法814条)があります。離婚の手続とよく似ています。

 このうち、まず、協議離縁について説明します。

 協議離縁の要件としては、まず、養親と養子との間の離縁意思の合致がなければなりません。そして、この離縁意思とは、社会通念上親子と認められる関係を無条件・無期限に解消させる意思をいうと考えられています。

 つまり、仮装離縁の場合、離縁意思がないものとして離縁無効となるのです。これは仮装離婚でも離婚は有効とされていたことと異なるため、注意が必要です。

 離婚の場合、内縁関係が準婚と認められる以上、法律上の婚姻関係を解消して、実質夫婦を続けようという要求を排除すべきでないとの考えがありました(前回の「離婚無効」参照)。この点、社会通念上、監護養育等の関係から親子としての実質を備えていながら、縁組の届出を行っていないため、法律上養親子と扱われないという事実上の養親子関係も認められています。そして、かかる事実上の関係に準婚ならぬ準縁組のような保護があるなら、離縁意思に対する考え方も離婚意思の場合と同様の結論となるはずです。

 ところが、そうならないのは、未成年者を養子とするのに家庭裁判所の許可が必要とされていること(民法798条本文)等に関係があると思われます。

 また、協議離縁の要件として、離縁の届出も必要です(民法812条・739条1項)。

 次に、養親が夫婦であるときに、未成年者と離縁するには、夫婦共同でしなければならないという原則があります(民法811条の2)。これは、婚姻している者が未成年者を養子とする場合、夫婦共同で縁組しなければならないという原則(民法795条本文)と同様の趣旨です。これは、養親となる者が婚姻している場合に、未成年者の養子を適切、円滑に監護養育するには、夫婦共に養親となって、親権を共同行使すべきとの思想があり、離縁する場合はその逆だというわけです。

 なお、夫婦共同縁組の原則には例外があり、配偶者の嫡出子(簡単に言えば、婚姻している男女間に生まれた子)を養子とする場合には、共同縁組は不要です(民法795条ただし書)。この場合、血縁のある実子として、元々、親子関係がある以上、改めて養子縁組する必要がないからです。

 もっとも、こう言うと、配偶者の非嫡出子(簡単に言えば、婚姻していない男女間に生まれた子)を養子とする場合にも、共同縁組せずともよさそうな気がします。しかし、これを認めると、子は、片方の親との関係では、養子縁組により嫡出子となる一方、もう片方の親との関係では、非嫡出子のままということになります。この事態は、子の利益上、好ましくないと考えられるため、実はこの点に旧法から改正が加えられたという経緯があったのです。

 なお、初めに述べた夫婦共同離縁の原則(民法811条の2)にいう「養親が夫婦であるとき」とは、養親双方と共同縁組している夫婦を指します。養親の一方との関係では、血の繋がった嫡出子であった場合や養子を持つ者が婚姻したが配偶者は養子縁組しなかった場合などは対象となりません。共同縁組していなければ、共同離縁もできないわけで、当然といえば当然ですが、たまに不安になる方がおられますので、付言しておきました。

 また、縁組当事者の一方が死亡した後に、生存配偶者が離縁する場合、家庭裁判所の許可を得て行わなければなりません(民法811条4項)。これは、生存当事者が死亡当事者の血族との法定血族関係を消滅させる目的で行うもので、死後離縁と呼ばれています。