今回は、親権の変更に関するお話しと、親権と似た概念としての監護権についても、少し触れてみたいと思います。
前回は、親権者を定める際の判断要素として、親側の事情及び子側の事情に関するものをいくつか挙げました。それぞれの精神的要因、肉体的要因、環境的要因や経済的要因などです。
(前回の記事はこちら:親権の指定・変更2)
これらは、離婚する際の親権者の指定のみならず、いったん親権者が指定された後に、親権者を変更する場合(民法819条6項)にも同様に当てはまる因子です。ただ、判断要素としては、同じファクターで判断されるとしても、判断方法は大きく異なります。それは、初めに親権者を指定する場合には、いずれの親を親権者とする方が子の福祉に資するのかということを、上記要因ごとに純粋に比較する方法がとられるのに対し、親権者変更の場合は、単なる比較ではなく、一度定めた方に親権を持たせておくことで、何らかの問題が生ずる恐れがあるかという観点からみていきます。
理論的には、親権の指定も変更も、子の福祉・利益を抜きに考えることはできず(民法819条6項参照)、何れを親権者とすることが子の発育上好ましいのかを緻密に判断しなければならないはずです。
しかし、実際には、父母間で精緻な分析的比較衡量がなされるのは、親権者の指定のみであり、親権者の変更は、現親権者の監護養育状況の問題をどれだけ指摘でき、これを立証できるかが中心となるのです。
つまり、諸事情を勘案すると、申立人側に親権を持たせた方が子供には良い結果をもたらすという事案でも、相手方の親権下で特別の問題状況は見あたらないという場合、親権変更は否定されるわけなのです。親権に関する分析調査は、主に家庭裁判所調査官が司ることになりますが(家事審判規則7条の2)、親権変更申立において、家裁調査官の調査に委ねただけでは、現状において問題なしとの判断がなされやすいので、調査に先立ち、いくつか問題点を指摘し、調査官調査に対し注意を喚起しておくことが重要となります。
親権変更の判断方法としては、
1)過去の監護養育状況、
2)現在の監護養育状況、
3)将来の監護養育の予測、
という3段階に分け、それぞれについて、具体的な検討を加え、最後はそれらの総合考慮により判断されます。
なお、単独の親権者が死亡した場合、後見が開始されますが(民法838条1号)、後見人が就任した後でも、もう一方の親が生存していれば、その生存親に親権を変更できるとされています。
また、親権の変更申立が、むやみに繰り返されたのでは、子の福祉上望ましくないので、変更後にすぐ再変更することはできないとする裁判例があったり(仙台高決平成4年12月2日)、何度も調停申立をすることに対し、調停をしない措置も採りうることとなっています(家事審判規則138条)。
次に、親権類似の概念として監護権がありますが、監護権は、親権のうち身分上の養育保護を中心とする権利をいいます。
監護権は、親権の一内容をなし、親権と監護権は大小関係にあります。
一般には離婚の際、親権者と監護権者を分離すべきではないとはされていますが、事情によってはその分離も認められています(新潟家審平成14年7月23日等)。
なお、監護権は、親権のように離婚と同時に必ず決定しなければならないわけではなく、離婚の前でも後でも指定できます。
また、監護権者には、父母以外の第三者もなることができます。