第1 はじめに

 最近、消費税改正法案が衆議院を通過しました。おそらくこの記事が出るころには、参議院も通過していることでしょう。この法案が成立すると、平成26年4月に8%、27年10月に10%に消費税が引き上げられます。この消費税の増税分は社会保障費に充てるというのが名目であげられています。ただ、この消費税の増税では、プライマリーバランスの均衡を保つことも厳しく、社会保障費の拡充に回すのは難しいと思います。消費税が10%になることで、年収500万円の標準世帯(夫婦と子供2人)が年間320万円を消費した場合、16万円の負担増になるそうです。家計にとって、非常に大きな負担になります。企業側も、商品に消費税が5%上乗せされることにより、従来と同じ値段で商品を売ろうとすれば、企業努力で5%安くする必要があります。中小企業にとっては大きな負担になります。

 さらに、来年平成25年3月末には、中小企業金融円滑化法の期限切れも迎えます。この法は複数回にわたり延長がされましたが、もうそろそろ限界でしょう。もし、このまま円滑化法の期限を迎えれば、中小企業の倒産が増え、金融機関の貸付の査定が厳しくなることは明らかです。

 しかし、企業はこのような環境の中で、設備投資をし、新たな分野を開拓し、成長させていく必要があります。そのためには資金調達をいかに効率よくするかがポイントになってきます。

第2 リース取引について

 その一つの方法がファイナンス・リース取引です。通常、企業がリース取引をしないで、設備投資をする場合、設備投資の為の資金を銀行から借りて設備を購入する必要があります。これに対して、リース取引をする場合、リース会社が設備資金を調達し、購入し、それをリースすることになり、ユーザーはリース料を分割で支払うことになります。したがって、リース取引の場合には、銀行の借入額を利用せず資金調達できるというメリットがあります。また、リース契約の場合、その商品の耐用年数よりリース期間を短く設定することにより、短期間で経費処理をすることで節税できるというメリットもあります。さらに、賃貸借取引の経理ができる場合、リース債務を顕在化させないようにすること(オフバランス)も可能です。その他にも、固定資産税や保険料負担、廃棄処理などの事務管理はリース会社が行い、修理等の対応もされ事務負担を抑えられます。

第3 会計処理の変更と税制改正

 従来、ファイナンスリース取引(所有権移転外)の場合には、企業会計上、売買処理と賃貸借処理の両方が可能でした。売買処理とは、貸借対照表に資産及び未払金計上をし、費用化にあたって、リース期間にわたり定額を減価償却費として処理する方法です。他方、賃貸借処理とは、リース料を直接的に費用化する処理方法です。この場合、売買処理と異なり、リース資産とリース債務がバランスシート上に乗せなくて済みます(オフバランス)。しかし、会計基準のグローバル化に伴い、所有権移転外ファイナンスリース取引も原則的に売買処理されることになりました。

 この会計基準の変更に伴い、法人税法及び消費税法も平成19年度に改正されました。まず、法人税法については、オペレーティング・リース取引(ファイナンスリース取引以外のリース)については、賃貸借処理となり、ファイナンス・リース取引については平成20年4月以降は売買処理となりました。また法人税法では、企業会計と異なり、リース期間定額法以外の償却方法は認められていません。次に、消費税法においても、リース資産の引き渡し時に、一括してリース料の総額に係わる消費税等を、その課税期間の課税仕入として税額控除する方法を原則としています。他方、リース期間中に、ユーザーがリース会社にリース資産を返却して残存リース料の減額を受けた場合は、減額分が課税売上となり、消費税がかかることになります。

 このように、会計基準の変更に伴い、所得税法及び消費税法の改正があり、ファイナンスリース取引においては、売買処理が原則となりました。

第4 中小企業の特例

 もっとも、そもそも会計基準の変更はグローバル化に伴い変更されたものであり、会計基準の変更及び税法上の改正は、大企業のみ対象とされています。中小企業については、適用対象とされていません。したがって、中小企業の場合には、所有権移転外ファイナンス・リース取引において、売買処理と賃貸借処理の選択が可能です。

第5 最後に

 このように、資金調達の方法でリース取引は今後重要度を増していく契約であると考えます。今回は、会計基準の変更と税制改正について執筆しましたが、リース契約は、リース期間の設定、メンテナンス、中途解約の処理、権利移転関係、再リース条項等様々な条項・問題を伴います。このようにリース契約は有効な資金調達方法ですが、法的なリスク等を理解して契約・契約書のチェックを必要とするものです。利用する際には、しっかり、契約内容を理解し、理解できない場合には、顧問弁護士に相談するとよいでしょう。