1. フランチャイズ契約とは
フランチャイズという言葉は耳にしたことがあるかもしれません。よくある例としては、コンビニエンスストアや飲食店などで広く利用されています。
フランチャイズ契約を締結する目的は、既に十分な知名度やノウハウを有するフランチャイザーが、これから起業を考えているフランチャイジーに対して、商標やノウハウ等の使用を許すことで、フランチャイザーはさらなる事業の拡大を行って自らの事業の価値を上げることを目指し、フランチャイジーは商標等を利用して単独で起業するよりも大きな利益を上げようというものです。
フランチャイズ契約は、商品の材料等の継続的売買、商標及び商号やノウハウ等の利用を認める賃貸借的な要素、フランチャイザーの有するノウハウ等に基づいたサービスの提供を求める準委任的な要素など様々な契約が複合的に組み合わされている複雑な内容となっています。
2. フランチャイズ契約締結時の説明義務
フランチャイザーとフランチャイジーがフランチャイズ契約を締結する際には、フランチャイザーからフランチャイジーに対して、様々な情報が提供されます。
例えば、売上の予測やライバル店の情報、商品の材料等の原価、ノウハウを提供するための研修方法、フランチャイジーがフランチャイザーに対して支払うロイヤリティの額(売上の数%などと定められることが多いようです。)などが事前に説明されるでしょう。
フランチャイジーとしては、売上予測を信じたり、研修が充実したりしていることを理由にフランチャイズ契約の締結を行うことになります。フランチャイジーがフランチャイズ契約の動機とするのは、このようなフランチャイザーからの提供された情報に基づくことがほとんどではないでしょうか。
しかしながら、フランチャイズ契約を締結する際に、フランチャイザーに信義則上の保護義務又は説明義務を認める裁判例が多くあります。この義務に違反していると判断された場合、フランチャイザーは、フランチャイジーに対する損害賠償義務を負う可能性があります。
信義則上の保護義務又は説明義務が認められる理由は、一般的には、フランチャイザーがフランチャイジーよりも、当該事業については多くの情報を有しているという当事者間の情報格差が主要な点と考えられます。
したがって、説明しなければならない範囲や程度については、当事者同士の属性(フランチャイジーが個人の初めて事業を行うような人物の場合とすでに会社を興しており事業の経験も長い場合では説明すべき範囲も異なるでしょう。)、事業内容の複雑さ、売上予測の容易さ等も考慮されたうえで決まるものとされており、個別具体的な判断が必要であり、契約締結時にどの程度の情報を提供しなければならないかを予測することは困難です。
情報提供の程度を検討することが困難である以上、フランチャイザーとしては、フランチャイジーに対し、原則として、契約締結時に今後の予測や研修内容について、誤解の無いように説明しなければならない法的な義務があると考え、丁寧な説明を心がけることが必要でしょう。また、フランチャイズ契約が、利益を保証するものではないことは誤解を与えないためには重要な説明事項になると考えられます。
3. フランチャイズ契約解消後の関係について
先ほども述べたとおり、フランチャイズ契約は、様々な契約が複合的に組み合わされている複雑な内容となっていますが、フランチャイズ契約においては、フランチャイズ契約を解消した後のことも踏まえて契約内容を検討することも重要です。
なぜなら、フランチャイザーは、フランチャイジーに対して、商標の利用や機械や器具等の貸し出し、ノウハウの提供など、有形無形の様々な情報や道具を提供していますので、それらを返却してもらうことは勿論、今後の利用も禁止しなければならないからです。
そのためには、契約解消後のフランチャイジーに対して、ノウハウ等に関する守秘義務及び競合する地域で同種事業を行うことを禁止する競業避止義務を負担させることが必要ですが、これらの義務に違反した場合のペナルティについても明らかにしておく必要があります。
一般的に、これらの義務に違反した場合には、損害賠償を請求することになると考えられますが、これらの義務違反に基づいて生じた損害額を立証することは非常に困難です。そのため、これらの義務違反に対して定額の違約金を定めて、義務違反を抑制することが検討に値すると考えられます。
定額の違約金を定めると、違約金以上の損害を請求できなくなる可能性はありますが、損害額の立証ができずに何もできないという事態は避けることができるでしょう。
契約締結時や契約解消時の問題についても気を配りながら、事業拡大のためにフランチャイズ契約を有効活用して頂きたいと思います。