1 はじめに

 こんにちは。
 前回のブログ(4月13日付「労働審判制度・その1」)では、労働審判制度の意義や特色等についてお話させていただきました。
 今回は、労働審判手続の流れについてお話ししたいと思います。

2 労働審判手続の流れ

⑴ 第1回期日前

 審判官(裁判官)と審判員(労使問題に関する専門的知見を有する者)が、事前に提出された申立書・答弁書・各証拠を検討した上で、期日の開始時刻前に集まり、事案について協議を行います。そこでは、審判官が持つ法律的な知見と、審判員が持つ労務・人事管理に関する専門的知見を結集して、争点に対する判断や事案の見通しについて、共通認識を持った上で、期日に臨むことになります。

⑵ 第1回期日

 第1回期日では、事前に提出された書面・証拠を踏まえ、審判官が事実関係、争点、争点に対する当事者双方の主張を整理します。訴訟と異なり、労働審判においては、初めから、審判官が当事者(代理人)に対し、積極的に質問をする傾向にあります。審判官からの質問の後、審判員が追加・補充の質問を行います。

 書面での主張及び口頭での質疑応答によって、審判官・審判員は心証を固め、審判・訴訟となった場合を想定した上で、当事者双方に対し、調停に関する意向について打診をします。当事者双方が、調停での解決を望み、第1回期日中に具体的な条件・金額が詰められれば、第1回で調停が成立します。第1回期日中に条件を詰めるのが難しい場合には、審判官が当事者双方に宿題(主張・立証の補充や、調停条件の検討)を課し、次回期日に持越しとなります。

⑶ 第2回期日

 第1回期日で宿題が課されていた場合、期日間に提出された補充書面や証拠の整理、調停条件の確認等が行われます。労働審判では、原則として、主張・立証が許されるのは第2回期日までとなります。審判官らは、補充の主張や調停の条件に関する当事者の意向を踏まえ、調停の成立の見込みがある場合、調停を試みることになります。

⑷ 第3回期日

 調停成立の見込みがある場合、第2回期日に引き続き調停が行われ、成立の見込みがない場合、審判官らによって審判が言い渡されることになります。

3 さいごに

 訴訟では、最初に当事者が主張立証を尽くしてから、裁判所が心証を開示し、和解・判決をするのが一般的ですが、労働審判においては、原則3回以内というルールがあるため、裁判所がどんどん心証を開示して進めていくという印象です。そのため、当事者(特に企業側)においては、審判官・審判員に押され、不利な条件を飲まされることの無い様、第1回期日までに、主張・立証方針を固め、調停の可能性があるとしてどのラインまでなら妥協できるか等、入念な事前準備をしておくことが重要となります。

 このように、労働審判手続は、スピーディさが売りである反面、入念な事前準備が必要となる等、シビアな一面もありますので、企業の方で、労働審判への対応にお悩みをお持ちの方は、早めに弁護士に相談すると良いと思われます。