こんにちは。

 前回のブログ(5月8日付「労働審判制度・その2」)では、労働審判手続の流れについてお話させていただきました。
 今回は、労働審判制度の利用状況についてお話ししたいと思います。

(1) 事件の種類

 解雇や雇止めが無効であることを前提とする地位確認請求事件、未払い残業代請求等の賃金請求事件が、全体の約80%を占めています。

 なお、労働審判は、「個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(個別労働関係民事紛争)」、つまり、解雇・雇止め、配転、賃金・退職金請求権等個々の労働者と事業主との間の紛争を対象とする手続であるため(労働審判法1条)、労働組合と事業主との間の集団的労使関係紛争は、対象となりません。

 ただし、例えば、不当労働行為禁止規定(労働組合法7条)を請求の根拠とする場合であっても、当該規定に基づく権利主張が、個々の労働者による個別労働関係に関するものである限り、労働審判の対象に含まれることになります。

(2) 審理期間

 裁判所に係属した労働審判事件のうち、70%を超える事件が3ヶ月以内に終了しており、1年近くにわたる事件は、全体のうち1%程度にとどまります。平均審理期間は71.4日で、平均して2ヶ月半程度で終了していることになります。

 これに対し、労働関係訴訟の平均審理期間は11.8月であり、事件解決までに1年以上の期間を要する場合も少なくありません。

 また、裁判所に係属した事件の実に9割以上が3回以内の期日で終了しており、例外的に4回以上にわたる事件は2%程度にとどまっています。場合によっては、手続外で当事者間に和解が成立し、期日が実施される前に申立ての取下げにより事件が終了することもあります。

 これに対し、労働関係訴訟の平均期日回数は約7回です。

 これらの数値からも、訴訟手続に比べ、労働審判手続では、いかに迅速性が重視されているかがお分かり頂けると思います。

(3) 事件終了の事由

 事件全体のうち、70%の割合で調停(和解)が成立しています。また、これに加えて、調停不成立で審判となった場合において、異議申立てがなされずに終了した事件も含めると、80%近い事件が、訴訟に移行することなく調停又は審判で終了していることになります。

参考資料
平成23年7月8日「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第4回)」(最高裁判所)