皆さん、こんにちは。

 2月10日の記事では、なぜ国は特許という制度を作って発明者を保護しようとするのかについて検討していきました。そして3月23日の記事では、発明者が特許法による保護を受けるためには、出願という手続をとることが要件となっていることを説明しました。今回は出願にあたってどのような要件が要求されているかについて検討していきたいと思います。

 そこで、前回の復習ですが、発明者が特許法による保護を受けるために、公開を前提とする出願という手続を踏むことが要求されているのは、発明者に発明の内容を公開してもらうことで、人、物、金といった有限な資源が同じ発明のために投資されることを防止するためでした。

 しかし、出願という手続をふんでとにかく公開しさえすれば特許による保護が与えられるのでしょうか。たとえば、出願内容が公開されても全く実施できないようなときも保護されるとすれば、有限な資源が同じ発明に投資されることを防止するという目的を達成できませんね。

 そこで、特許法36条4項は「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」とし、1号は「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と規定しています。

 つまり、出願した発明の属する分野において普通と考えられる知識を有している者であれば、その発明の内容を実施できる程度に明確かつ十分に発明の内容を記載した出願でなければならないと規定しているのですね。そしてこの要件に違反するような出願は特許による保護を受けることができず拒絶されることとなっています(特許法49条4号)。

 このようにすれば、出願して特許による保護を受けたいと考えているものであれば、発明の内容を実施できるような記載にして出願しますよね。その結果、第三者は、出願して公開された発明の内容を実施できる程度にその内容を知ることができるので、有限な資源が重複的に投資されるという自体を防ぐことができるのですね。

 しかし、重複的な資源の投入を防止できたとしても、同じような発明を同時に2人以上のものがしてしまった場合どちらを保護すべきでしょうか。次回はこの点についてさらに検討していきたいと思います。

 それでは、また。

弁護士 福永聡