皆さん、こんにちは。
 5月1日の記事では、同じ発明を2人以上のものがしてしまった場合どちらを保護すべきかという問題を取り扱いました。結論として特許法は、先に出願をした者を保護するという先願主義を採用していることを説明しました。

 先願主義は、先発明主義と比較すると、どちらが先に発明をしたのかの認定よりもどちらが先に出願をしたのかの認定の方が容易である点、先願主義によれば発明者は発明を秘匿することなく急いで出願し発明の内容が公開される点で優れているとされています。
 先願主義には上記のような優れた点があると考えられているため、先発明主義ではなく、先願主義が採用されているということを説明しました。

 このように特許法は先願主義を採用しているのですが、それでは、同じ発明を同日に2人以上のものが出願した場合はどうするのでしようか。

 まず、先願主義の精神を徹底するなら、同日のなかの時間を比べて先に出願した者を保護しようということになるはずです。しかし、時間を比べて徹底的に考えることもできますが、仮にそのようにするならば、出願した時間をきっちり記録しておかなければならなくなり事務作業として煩瑣といえるでしょう。また、時間まで考えたとしてもやはり同時に出願するという事態は考えられるでしょう。その場合、一体どっちを保護すべきかという問題は再び生じてしまいます。

 一方で、同じ発明を別の人が同時に出願するという事態はそもそも数多く生じるとは考えにくいでしょう。そうすると、同日の時間の先後までを考えていくよりも、同日の場合をどのように考えるかを規定することで足りるように思います。

 特許法も上記のような考え方を採用したのか、同じ発明を同日に2人以上のものが出願した場合を規定しています。そこで、次回以降、特許法が、同日に2人以上の者が同じ発明を出願した場合について、どのように規定しているかについて具体的に検討していきたいと思います。

それでは、また。

弁護士 福永聡