前回の記事(2月10日分)では、なぜ国は特許という制度を作って発明者を保護しようとするのかについて検討していきました。(記事はこちら:なんで発明を保護するの??
 そこで今回は、発明者を具体的にどのように保護するのかを検討して行きたいと思います。

 そこで、前回の復習ですが、なぜ発明者を保護するのかの理由の一つとして、発明者は研究開発費用を投じているところ、発明者を適切に保護しないと、価格競争に負けてしまうので、発明者の技術発展のモチベーションが下がり技術発展しなくなる恐れがあるというものがありました。

 とすると、発明者を具体的にどのように保護するのかという点も、このような弊害を防止する観点から定められるはずです。そこで、上記のような弊害を防止するためにはどうしたらいいのかという観点から検討していきましょう。

 このような弊害を防止するためには、発明者に現在の特許権の内容と同じように特許をうけた発明を権利者だけが独占的・排他的に実施することを認めるという方法が考えられます。ただ、上記のような弊害を防止するためには、現在の日本の特許法のような方法しかないでしょうか。

 そんなことはありませんよね。たとえばこのような方法はどうでしょうか。素晴らしい発明をした発明者には国が報奨金として一定のお金を付与するという方法です。これなら、発明者の技術発展のモチベーションの低下という弊害が防げそうですよね。実際に、私有財産を認めない制度の国々ではこのような方法がとられていたことがありました。

 しかし、報奨金はどのように決めるのでしょうか??発明の中には経済的価値が高いものもあれば低いものもあります。発明と一言でいってもその価値には大きな差があり、それを報奨金という形で評価することは難しそうです。

 むしろ、自由主義経済を基本とする日本のような国では、発明者に独占的な実施を認め、発明の価値は市場経済の判断に任せた方が適切なような気がします。そのような理由もあってか日本をはじめ多くの国々では、発明者に独占排他的な実施を認めるという保護の方法を選択しています。

 しかし、これも実は考え方の一つにすぎないのだと思います。みなさんの中でそのような考えは違うと思ったら、発明者の技術発展のモチベーションの低下を防ぐためにどのような保護の方法を選択したらいいか考えてみるのも面白いかもしれません。

 それでは、また。

弁護士 福永聡