年末も押し迫ってまいりました。だんだん寒さも増してまいりました。みなさんは風邪など引かずにお過ごしでしょうか。前々回に営業秘密の保護に関して概説いたしましたが、今回は不正競争防止法における営業秘密として保護されるための要件について詳しく見ていきたいと思います。

 不正競争防止法第2条6項で規定されている要件は次の3つです。

① 秘密として管理されていること(秘密の管理性)
② 事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
③ 公然と知られていないこと(非公知性)

 但し、契約や他の法令によりこれに該当しない情報が保護を受ける可能性はあります。ここでは省略させていただきます。

 まず、①秘密の管理性ですが、情報保有者が主観的に秘密として管理しているだけでは足りません。客観的に管理していると認識できる状態にあることが必要です。

 では、どのように管理していると客観的に管理していると認識できる状態にあるといえるのか、具体的な管理方法が問題となります。

 判例ではいろいろありますが、一般論として、「不正競争防止法2条4項(現6項)の『秘密として管理されている』といえるためには、① 当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることを認識できるようにしていることや、② 当該情報にアクセスできる者が制限されていることが必要である」(東京地裁平成12年9月28日判決・判例時報1764号104頁)とされています。

 具体的には、判例を細かく見ていく紙面上の余裕がありませんが、たとえば、「厳秘」などと書類に記載するなどして営業秘密であることを明示したり、情報へのアクセス制限をしたり、情報管理者を設けて秘密管理ルールなどを教育していったりする方法が考えられます。ただし、これらは一例であり、これらの1つをやっていれば絶対に大丈夫というものでもありませんので注意してください。判例では、この要件が認められるためには相当程度厳格な秘密管理が要求されていますし、中核的な要件ですので、十分な対処が必要です。

 次に②有用性ですが、これも主観的に決められるものではなく、客観的に有用であることが必要です。有用性については、「秘密として管理されている情報のうちで、財やサービスの生産、販売、研究開発に役立つなど事業活動にとって有用なもの」が営業秘密として保護される対象になるとされています(東京地裁平成14年2月14日・判例集未搭載)。「この趣旨は、事業者の有する秘密であればどのようなものでも保護されるというのではなく、保護されることに一定の社会的意義と必要性のあるものに保護の対象を限定するということであ」りますから、「犯罪の手口や脱税の方法等を教示し、あるいは麻薬・覚せい剤等の禁制品の製造方法や入手方法を示す情報のような公序良俗に反する内容の情報は、法的な保護の対象に値しないものとして、営業秘密としての保護を受けない」ことになります。

 保護を受けるのは、経済活動の中で有利な地位を占めて収益を上げることを可能とする情報や財・サービスの生産・販売、研究開発、費用の節約、経営効率の改善等に役立てることができる情報などが保護の対象となるでしょう。

 最後に③の非公知性ですが、当該情報が刊行物に記載されていない等、保有者の管理下以外では一般に入手できない状態にあることが必要です。

 以上が営業秘密の要件についての説明です。
 今年最後のブログになってしまうかと思われますが、良いお年をお過ごしください。

弁護士 松木隆佳