あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
 さて、前回までに営業秘密の要件を述べてきましたが、今回は具体的にどのように管理をしていたら「秘密として管理」されていることになるのかを、判例等を参考にまとめ、概括的に説明をしていきたいと思います。なお、詳細については経済産業省のホームページをご参照ください。

 まず、具体的管理方法としては、情報を個別的に管理していく方法と、組織的に管理していく方法とが考えられます。

 個別的に管理する方法としては、物的管理方法と人的管理方法が考えられます。

 物的管理方法についてですが、①情報に対するアクセス権者を限定したり、②アクセスする者の使用・開示の範囲を限定したり、③アクセスの記録をする方法が考えられます。具体的には情報にパスワードをかけたり、アクセス権者のパソコンからしかアクセスできないようなサーバーに入れたり、FDやCD、USBメモリなどに情報を保管してそれを金庫等に保管したりする方法などが考えられると思われます。また、④アクセス記録をモニターするなどの方法による管理でも、情報漏洩を万全に防ぐという観点からは万全ではないかもしれませんが、不正競争防止法の適用を受けるという観点からは有用だと思われます。その他、⑤秘密であることを文言に記載したり、マークを残したりしておくことも考えられます。さらには、⑥建物、事務所等のセキュリティ配慮をしたり、専門管理部門を設置したりする方法も考えられます。

 人的管理に関しては、現在、中途採用・派遣社員・早期退職による転職など、雇用の多様化が進んでいますので、このような現状も踏まえた対処が必要かと思われます。具体的には、雇用形態に応じて秘密保持契約を締結したり、競業避止義務を課したりしていくことが考えられると思われます。

 組織的管理方法とは、組織として情報管理のシステムを構築していくということであります。システムの構築に当たっては、管理策を策定し、それを実施するとともに管理状況を監査の上、時には見直していくということが必要であると思います。管理システムについては複雑かつ種々の方法があると思われますので、この方法による場合には研究していただければと思います。

 以上の方法が考えられますが、これのみに限られるものでもないと思われますので、今後も探求していく必要があるかと思われます。なお、上記の各方法はあくまでも「秘密として管理」の要件に該当させる管理方法という観点で記載したものであり、これによれば情報漏えいの可能性がないというものではありませんのでご注意願います。また、法律上守秘義務が生じる情報であるからといって「秘密として管理」されている情報とは当然にはなりませんので、ご了承ください。

弁護士 松木隆佳