マンションの管理組合は、区分所有者がマンションの管理規約に違反している場合に、様々な対抗手段をとることができることは、「管理費が支払われなかったときの対処法」の記事で紹介してきました。例えば、区分所有者が、マンションの管理費を支払わなかった場合、管理規約の定めや管理組合員の集会の決議により、管理組合が当事者になって、管理費を滞納している区分所有者に対して、裁判を提起して管理費の支払いを請求することもその1つです。
ただし、裁判になれば弁護士に依頼するのがつきものです。裁判になると、マンション管理に関する事件の当事者の方だけでなく、あらゆる事件の当事者の方から「相手に弁護士費用を請求することはできないの?」と質問を受けることがあるのですが、不法行為等の場合を除いて、基本的には裁判で相手に弁護士費用を請求することはしません。
しかし、上記の例で言えば、管理費を支払わない区分所有者が原因で裁判になっているのに、相手に弁護士費用を請求できないなんておかしいと多くの方は思うのではないでしょうか。
そこで、このような場合に備えて、規約等に反した区分所有者に対して法的措置をとる場合、それに要する弁護士費用は全額その区分所有者に請求できるという規約を設けることが有効のようです。
東京地裁平成17年3月29日判決は、管理組合が、区分所有者に対して、裁判等の法的措置を講じた場合には、その法的措置に要する費用の実費全額をその区分所有者に請求することができるという内容の規約を有効とし、その裁判で生じた弁護士費用の支払いを管理費の支払いを怠った区分所有者に命じました。
このような規約があるからといって、常に弁護士費用を区分所有者に請求できるとは限らないのかもしれませんが、万が一のときに備えて、このような規約を設けておくことがいざというときに安心だと思います。
弁護士 竹若暢彦