マンションの管理規約に管理費の支払いをしなかった場合に、給水・給湯の供給を停止するという規約があったとき、管理組合は、管理費を支払わない居住者への対抗手段として給水・給湯を停止する措置をとることができるのでしょうか。今回は、このような措置をとることが不法行為に当たるかが問題になった裁判例(東京地裁平成2年1月30日判決)を紹介します。

 この判例では、そもそも管理費不払いの対抗手段として、給水・給湯を停止する措置をとることができるという管理規約の有効性が問題となりました。上記裁判例は、給水を受ける対価として管理費を支払うのは当然であること、支払を拒む正当な理由があるのに支払わされた場合には、不当利得による返還を求めることができること等を理由に、給水・給湯を停止する措置をとることができるとする規約は有効であると判断しました。

 しかし、このような規約が有効だとしても、給水・給湯というのは、日常生活に欠かせないものですから、規約にあれば無条件に停止措置が認められるという訳ではないようです。

 上記裁判例は、「諸経費の滞納問題の解決について、他の方法をとることが著しく困難であるか、実際上効果がないような場合に限って」給水・給湯停止措置が認められると判断しました。

 上記裁判例では、管理組合は、給湯を停止することを予告して停止措置をとったのですが、予告しただけでは足りず、管理組合が行った給湯停止措置は不法行為に当たると判断されました。

 新しいマンションでは、戸別に水道局と水道契約をして、給水を受けていると思うのであまり問題にならないと思いますが、古いマンションで、マンション単位で給水契約をしているようなマンションでは、居住者が管理費を支払わないからといって、安易に給水・給湯停止措置をとらないよう気をつけましょう。

弁護士 竹若暢彦