デッドコピーとは要するに模造品のことですが、貴社の商品をライバル会社がそっくりそのまま真似て販売し始めたらどうしますか?

 特許法や意匠法による保護が受けられるような商品であれば良いのですが、そうであっても登録していなければこれらの法律による保護をうけることができません。また、著作権法による保護であれば登録は不要ですが、工業製品の場合は非常にハードルが高いと思われます(純粋美術や美術工芸品と同視できるような形態でなくてはなりません)。

 民法上の不法行為にあたるとして損害賠償請求を行うことも可能でしょうが、その場合、差止め請求までは認められません。

 そこで不正競争防止法の出番です。同法1条1項3号がまさにこのデッドコピーを規制した条文となります。条文はおいおい見ていくとして、この1条1項3号の趣旨を考えてみましょう。

 そもそも、3号のような条文はもともと不正競争防止法にはなかったのです。しかし、上に書いたような、特許法はもちろん意匠法や著作権法の保護を受けられない商品について、民法の不法行為で事後的にしかデッドコピーを規制できない(つまり損害賠償請求しかできない)となると、初めにオリジナルの商品を開発して販売していた企業に大変酷な結果となります。実際、そのような裁判例が2件ほど(タイプフェイス事件・大阪地裁平成元年3月8日判決と木目化粧紙事件・東京高裁平成3年12月17日判決)あり、それで3号を新設することになったのですね。

 また、デッドコピーを容認することは、「新商品の開発に対する社会的意欲を減殺することになる」から「先行者の開発利益を模倣者から保護することとした」と東京地裁平成11年2月25日判決にあります。この判決の視点は、おそらく一企業の利益を保護するというよりもっと広いものですね。「ただ乗り」(よく英語でフリー・ライドと呼んでいます)を許してしまうと、新しい商品を開発する意欲がなくなってしまうが、そうなると健全な市場競争が行われなくなってしまうということです。もっといえば、消費者にとっても、より良い新商品が世に出ないということは大きな損失ですよね。

 それはともかく、3号は「資金・労力を投下」した「先行者の開発利益を模倣者から保護する」ために設けられた規定ですので、そのような趣旨を念頭において考えれば自ずと3号の解釈も導かれると思います。

 なお、不正競争防止法を用いるメリットとしては、先に書いた①差止め請求が可能になることに加え、②不正競争を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他不正競争行為の停止または予防に必要な行為の請求ができること、③損害賠償請求の際、侵害者が模倣行為により利益を得ている場合に、これを被侵害者の損害額と推定することができること、④商品形態の使用に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額を損害額として請求することができること、⑤謝罪広告その他信用回復に必要な措置を請求することができること、があります。

 次回、3号の条文について詳しく見ていくことにしましょう。

弁護士 太田香清

次回:デッドコピー規制②