ゴールデンウィークはいかがお過ごしだったでしょうか。
 さて今回も商標法の続きを見ていきたいと思います。

4.不使用商標対策

 前回、商標登録は、使用していることが要件ではないと説明いたしました。しかし、使いもしない商標が登録され、商標選定の自由が妨げられるおそれがあります。
 そこで、不使用商標を減少させるための制度がいくつか規定されていますので、これらを見ていきたいと思います。

(1)使用の意思

 出願人が自己の業務に係る商品、役務について使用する商標でなければ、登録は許可されません(商標法3条1項)。現在使用していなくても、将来使用する意思があれば足りるというのは前回説明したとおりですが、出願人の過去の事業態様等の事情から指定商品、役務に関して業務を行う意思がない場合には拒絶されるでしょうし、仮に将来使用する計画があるとしても、その計画が具体化することを合理的に説明できない限りは拒絶を免れないでしょう。

 使用意思は、自己の業務に使用する意思でなければなりません。単に他者に使用される意図があるというだけでは商標登録は認められません。これに関連して、親会社が子会社に使用させる目的で商標を登録する場合、認められるかが問題となります。自己の業務に使用する意思でなければならないとされているのは、商標ブローカーを防止することにあります。そうすると、子会社に使用させる目的の場合は、自己の業務に使用する目的と同視することができるとして商標登録を認めてもよいものと思われます。実務上では、出願段階であまりうるさく審査されていないため、審査を事実上通ってしまっており、不使用による取消しの段階では他社に使用させていれば足りるために、事実上、登録が認められることとなっているようです。

 また、出願人は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して商標ごとにしなければなりません(法6条1項)。これにより指定された商品や役務のことを指定商品、指定役務といいます(法4条1項11号)。商品や役務の範囲をどのように設定するかが問題ですが、あまり広範囲な商品、役務を設定して出願させると不使用取消しの実効性がなくなりますので、そのようなものは認められないでしょう。しかし、商品や役務は多数ありますので、これを明確に基準化することもできません。そのため、出願人の指定の仕方には拘束力がなく、出願人が一つの商標に関し、包括的に商標や役務を指定することは妨げられていません。ただし、多数の商品や役務を単純に列挙するよりは、ある程度、共通の性質をもった商品や役務をひとまとまりに指定する方が、既登録商標をサーチする第三者にとってもわかりやすいでしょう。なお、商標の範囲が無制限に拡大されるのを防止するために、商標や役務の指定は、政令で定める商品及び役務の区分に従ってしなければならないとされています(法6条2項)。政令に細かく記載されていますので、必要に応じて、商標施工例1条、商標法施行規則6条の別表をご覧ください。

 なお、一般社団法人その他の社団若しくは事業協同組合その他特別の法律により設立された組合又はこれらに相当する外国の法人は、その構成員に使用させる商標について団体商標の登録を受けることができます(法7条)。団体商標の制度です。自己使用の要件を一部緩和したものとなっています。また、地域団体商標の登録も一定要件の下に認められています(法7条の2)。これらの規定を利用してグループ会社の包括的な商標登録をしていくことも考えられると思います。

 今回は、ここまでとさせていただきます。ありがとうございました。

弁護士 松木隆佳