こんにちは。
 今日は、破産手続において租税債権がどのように扱われるのか考えてみたいと思います。

1.前提

 破産手続において、債権はまず破産債権と財団債権に分かれます。
 破産債権は、債務者が破産したときに破産財団から平等な弁済を受けることになる債権であり、破産債権の中でも他の破産債権より優先して弁済を受けられる優先的破産債権や、一般破産債権の配当があった後でないと配当を受けられない劣後的破産債権などに分かれます。
 これに対し、財団債権は、破産手続によらないで破産債権に優先して破産財団からいつでも弁済を受けることができます。

2.破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権

 現行破産法では、破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた租税等の請求権は、破産手続開始当時、納期限が到来していないもの又は納期限から1年を経過していないもののみが財団債権として優先・随時弁済を受けられます(破産法148条1項3号)。それ以外は、優先的破産債権(破産法98条1項)として扱われ、他の破産債権に優先して破産財団から弁済を受けることになります(国税徴収法8条、地方税法14条)。

3.破産手続開始後の原因に基づいて生じた租税等の請求権

 平成16年改正前の旧破産法では、破産手続開始決定後の原因に基づく公租公課のうち、「破産財団に関して生じたるもの」は財団債権とされていました(旧破産法47条2項但書)。
 この「破産財団に関して生じたるもの」の意義について、判例は、

「財団を構成する財産の所有・換価の事実に基づいて課せられ、あるいは右財産から生ずる収益そのものに対して課せられる租税その他破産財団の管理上当然その経費と認められる公租公課のごときを指すものと解するのが相当である」

としました(最判昭62.4.21(民集41.3.329))。

 これを受けて現行破産法は、破産手続開始決定後の原因に基づいて生じた租税等の請求権は、「破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権」(破産法148条1項2号)に限って財団債権となり、財団債権とならないものは、劣後的破産債権となると定めています(破産法97条4号、99条1項1号)。
 しかし、問題となる租税が「破産財団の管理、換価及び配当に関する費用」であるかについては判断の分かれる場合もあることから、上記昭和62年判例は現行破産法においても十分参考になると考えられます。

 昭和62年判例では、予納法人税と土地重課税が問題となりました。

(1) 予納法人税の一般部分について

 予納法人税とは、清算期間が数事業年度にわたる場合に、法人税の徴収を確実にするために、各事業年度の清算所得を標準として課税されるものです(法人税法102条、105条)。

 昭和62年判例は、この予納法人税について、①清算所得を課税対象とする税の予納は破産財団とは直接関係のない事柄であること(清算所得とは、清算手続きで得られた金額から負債や資本金を除いた額だからです(法人税法93条)。)、②破産法人の場合、定型的に債務超過であり、清算法人税はほとんど例外なくゼロとなるため、予納法人税を財団債権として破産管財人に予納させても全額還付されることになり、合理的でないことを理由に、財団債権性を否定しました。

 したがって、予納法人税は財団債権ではなく、劣後的破産債権(破産法97条4号)となり、破産財団から配当を受ける可能性はほとんどなくなります。

(2) 土地重課税について

 法人が土地の譲渡によって得た利益に対しては、通常の法人税に加えて、その土地の保有期間に応じて利益額の5%、10%、又は15%が課税されます。

 上記昭和62年判例は、予納法人税ではあるものの、土地重課税については財団債権性を認めました。これは、土地重課税は欠損金との損益共通が許されていないという特徴があり、「債務超過の状態にあり、何ら清算所得が生じない場合であっても、土地重課税は納付しなければなら」ず、「破産債権者全体が共同で土地重課税を負担しなければならないものであり、破産手続においても、重課税が総破産債権者に対する優先性をもっていることを意味する」ためであると考えられます(伊藤眞「破産法・民事再生法」〔2007〕234頁)。

 ただし、土地重課算税制度自体が平成10年1月1日から適用停止となっており、当分の間土地重課税は適用されません。