1 法曹への道
司法試験に合格し司法修習を終えると、それぞれの選択にしたがって、裁判官・検察官・弁護士になります。
但し、弁護士と違って、裁判官と検察官に関しては、希望者全員がなれるわけではありません。
裁判所も検察庁も国家の機関ですから、ここで働く裁判官も検察官も公務員です。なので、裁判官や検察官になるということは、公務員として就職することも意味しています。したがって、当然、その採用人数にも限りがあり、定員枠があるわけです。
正式な定員枠はわかりませんが、裁判官は概ね100名前後、検察官は70名前後と言われています。給料はもちろん国民の税金から支払われるわけですが、国家予算の関係もあって、この程度の採用人数になっているようです。
2 検察官の女性枠
さて、今回問題にしたいのは、この検察官の採用人数の女性枠についてです。法務省は、約70名の検察官採用枠について、女性枠が存在していることを認めてはいません。したがって、検察官志望のうち、たまたま優秀な人が女性ばかりだったため、採用された新任検察官のほとんどが女性だった、なんていうことは理論的にはありうることになります。
しかし、本当か嘘かは分かりませんが、私が司法修習生だった頃、1994年~1996年にかけてですからもうずいぶん昔ですが、検察庁は男社会だと言われていました(あくまでも、司法修習生たちの噂です)。
弁護士が銀座辺りでホステスに接待されながら優雅にお酒を楽しんでいるのと対照的に、検察官は庁舎内で同僚と手酌酒…なんていうイメージが定着していました。乗りも体育会系です。
そんな状況の中で、司法修習生の間でささやかれている検察官の女性枠に対して異議を唱えた弁護士さんがいるようです。
土井香苗さんという人で司法修習期は53期だそうです。
この人は元々検察官志望だったそうなんですが、修習生時代に、約70名程度の検察官採用人数に対して各クラスから女性は1名に限るという暗黙の女性枠があることを知ったそうです(2010年3月8日付毎日新聞朝刊)。ある女性修習生が検察官になりたいことを研修所の検察教官に話すと、「女性は1名だから。もう決まっているから」などと教官に言われてしまう…なんてことが普通にあったそうです(前掲同紙)。
なので、建前上、そんな女性枠なんて存在しないことになっていても、実際には存在していた。それを確信した彼女は、修習生当時に、「検察官任官における女性枠を考える修習生の会」を結成して、そのような女性差別枠を設けることをやめさせるべく当局に働きかけたようです。
あくまでも、毎日新聞の報道ですが、検察官の女性の採用は増えたそうです。
弁護士法人ALGでは、女性枠のようなものは一切設定しておりません。弁護士としての仕事への意気込みを最優先して採用しているつもりですが、結果、女性が多くなってしまいました。パートナー弁護士は4人いますが2人は女性です。勤務弁護士は、男性は3人で女性は4人ですから女性のほうが多いんですね。
別に男性がダメだというわけではないのですが、いい人を選ぶと自然と女性の割合も増えてしまったわけです。
個人的には検察官も女性を増やしたほうがいいですよ。検察官の仕事は犯罪者を相手にするので、何となく女性には荷が重い、男性的な仕事と考えられているのかもしれませんが、個人的には男性の検察官よりも女性の検察官のほうが恐いですしね…(笑)。